イルカ38景


19:涙



 泣く理由があるのかと、カカシが問うた。

「ありません」

 では、その涙の訳は?と更に問われてイルカは答えに窮した。

「あなたがそんな風に責めるから」

 責めるってこの事?と、カカシは穿ったままの己をグイと更に奥へ捩じ込んだ。

「ああっ」

 それともコッチ? と、喉を晒して喘ぐイルカの首筋に、圧し掛かって顔を埋めてくるカカシ。 喪服プレイとか何とか言って全てを脱がそうとはせず、広く開いた襟元に顔を突っ込むようにして舌を這わしている。 胸元まで捲り上げた上着の下では、片手が乳首を捏ねていた。

 これがいけないんだね
 俺の舌で舐めて溶かして、もう誰の目にも見えなくしてしまおう

 そう言ってカカシはイルカの弱い右の鎖骨の窪みに舌を挿し込んだ。

「ひっ」

 ヒクリと震えて頭を打ち振りイルカは悶えた。
 その場所をカカシに舐められると、息ができなくなるのだ。

「は… あ、も、許して」

 背中に腕を通しきつくイルカの身体を抱き締めると、身体ごとゆさゆさと揺すりながら執拗にそこを舐め続けるカカシ。

「ああ、ああ、ああっ」

 切れ切れに叫ぶように喘ぎ声を上げて、イルカはカカシの腕の中で身を捩って悶えた。 カカシの舌が右の鎖骨の窪みをザラリと舐める度に、右半身全体が引き攣るように強張る。 だが、いくら身を捩ってもカカシの腕は少しも緩まず、イルカの震える体を更にきつく抱き締めて下からガンガンと突き上げてくる。

「あ、やぁ、あぁ、許して、許してぇっ」
「許さない」

 ここを他人に触らせたでしょう?
 恥ずかしい恰好をして
 あーんなことやこーんなことまでさせたでしょう?
 許しませんよ、イルカ先生

「ゆ、許し、てぇ、ああーっ」

 涙をぼろぼろと零して懇願しても、カカシの責めが止むことはなかった。 取調べ室の大きな机の上。 回りには累々と横たわる刑事や制服。 さっき最中にかかってきたのをカカシが取り、声を聞かせてあげましょうね、とそこに放置されたままになっている受話器が外れた電話。 そして…

「あ? な、無い、ん」
「無いって何が?」

 律動を収めることなくカカシがまた問うた。 収めるどころか更に激しく大きく、突いては抉り、抉っては掻き回す。 無い。 無いって何が? あれだ、猫じゃらし。 カカシが来るまでそれで鎖骨を擽るという世にも恐ろしい拷問を、この取調べ室で受けていた。

「ああアレ。 あれはさっきナルトと木の葉丸が来て持っていきましたよ。」
「さっき…って?」

 イルカはまさかと怯えた目でカカシを見上げた。

「も、許して…のあたり?」
「な………!」

 羞恥で全身を朱に染めるイルカを舌なめずりをして舐めつけ、カカシはまた首筋に顔を埋めた。

「ああっ そこ、やぁ、ああっ」

 激しい羞恥心と尽きない快感。 刺激に震えながらも恥ずかしさに悶える体を下から抉り、それらを混ぜて練り上げて快楽の海にイルカを突き落とす。 それがカカシの…

               ・・・

「ライフワークなんです!」
「…オマエ、Hだ」
「ほんと、すげぇとんでもエロ小説だよ、それ」
「フィクションじゃありません!」
「だいたい俺ら猫じゃらしで拷問なんかしないし」
「普通拷問は取り調べ室ではしませんよね?」
「バカモノ! 今日日拷問なんかしてみろ? マスコミに何言われるか」
「やっぱりオマエのエロい妄想じゃないのか?」
「そうだよ、子供まで使って羞恥プレイ? オーノー!」
「でもでも、ほんとにそういう事をあの人は平気でするんです!」

 信じてください〜と喪服のままのイルカは取り調べ室の机に突っ伏して泣いた。 だって、ぐずぐずしていたら本当にカカシが乗り込んでくる。 そうしたら本当に今話していたようなことをされてしまうに違いない。 俺は経験でモノを言ってるんだ! 信じてくれよ〜!

「いや、でも今の話、たいへん興味深いですよ」

 と横で聞いていた学者風の精神分析医がメガネを指先で押し上げる。

「そ、そうですよね! 信じてくれますか?」
「信じる信じないは置いとくとして」
「置くな!」
「普通、この手の妄想は」
「妄想じゃねぇ!」
「もっと奇天烈で辻褄の合わないものなんですが、今の話はちゃんと筋が通っている。 いや、実に興味深い。」
「そんな事言ってもですね、先生。 こいつは別にダンスホールで機関銃乱射した未来人って訳じゃないんで」
「とにかく! 研究の余地ありです。 もっと先を聞きたい。」
「アンタ、だたのエロ好きなだけじゃないんか」
「ただのエロ話じゃなーいっ ほんっとーに今すぐにでも起きるすっごく危険な人物についての…」

 その時、2階の取り調べ室にまで聞こえてくるような派手な破壊音が轟いた。 正面玄関のほうからだった。

「来た…!」
「な、なにが…おいっ いったい何が起こった?」

 一人の刑事が跳び出て行く。 署内は既に恐慌状態に陥っており、あちこちから悲鳴やら殴打の鈍い音が響き、何かが確実にこちらへ迫ってくるのが判った。

「だから言ったのに!」
「と、とにかくオマエはここに居ろ!」

 残りの刑事も部屋を後にした。 分析医はとっくにどこかに姿を消している。

「どどど、どーしよ〜〜〜ッ!」

 さぁ、イルカ絶体絶命!
 どうなるイルカ?!
 このままターミネーター・カカシの餌食になってしまうのか?! 
 取り敢えず 完!(すみません、終らせてください〜)



この話は、17:喪服13:三代目 から続いています。



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