再見


8



          イルカ 13

   イルカ
   イルカ

 カカシの低い呼び声が自分の名を何度も繰り返す。 胸が熱い。 先程まで名前も知らなかった男に身を任せる。 自分と同じ男の手が、性的欲を持って自分の体を這い回る。 不思議だ。 感じる。 気持ちがいい。 もっと触れられたいと望み、イルカは覆い被さる男の背に自分の手を彷徨わせた。 背骨、肩甲骨、肩…。 肩から首筋にかけて相手に倣い自分も唇を押し当てると、カカシは嬉しそうに笑った。 その顔がやはりどこか幼く、これから彼としようとしている事とのギャップに苦しみながらも、イルカは寄せられる唇に少し顔を浮かせて応えた。 笑ったつもりだったが、どうしてか涙が頬を伝って流れた。




          カカシ 11

 右の乳首を右手で捏ね、左の乳首は口に含む。
「あ…うん…ぁあ…や」
 イルカはやっと素直に喘ぎを発し始めた。 かわいかった。
 乳首は赤く尖り、乳輪がぷくりと腫れ上がる。 左手で肉をかき集めるようにして胸を揉み、唇を尖らしちゅうと吸い上げると、あうっと身悶え、右の乳首から手を離し、脇腹を撫で摩り、背骨に添ってつぅと撫で上げると、息を呑んで背が撓る。 感じる身体だ、と思った。 背筋を何度も何度も辿ると、カカシの肩にしがみ付いて耐えている。 肩口に口を押し当て、声を殺して震えているくせに、まだまだ理性を捨てられないその様子は辛そうだったが、返って官能的でもあった。
 肩にイルカをしがみ付かせたまま、その身体を抱いて少し浮かせると、左手を首の後ろに回しぐっと抱き込んで固定する。 首筋にむしゃぶりついてあちこち吸い上げ朱の痕を散らし、最後に唇に辿り着いて深く口を合わせた。 拙くも舌を差し出し、カカシのそれに応えようと絡めてくるのを、更に濃厚に犯して震わせる。 そうしてキスに気を取られているうちにイルカの股間に徐に手を伸ばした。
「んっ  んんっ」
 口を離して声を発そうとするのを、がちっと抱き込んだ肩を押さえて許さず、舌を深く深く差しこみ、右手で既に堅く張り詰めているイルカの股間を強く上下に撫でる。
「んーーっ」
 首を左右に振り何とか逃れようと肩を押す手をものともせずに、ついにはズボンに手を滑り込ませて直接イルカを握りこんだ。
 イルカは目を見開いて信じられないものを見るように至近距離のカカシを睨んできた。 カカシは態と目をしっかり合わせると、ねっとり糸を引かせて口を離した。
「な、何をっす…、 あああ!」
 カカシは容赦しなかった。 顔に朱を上らせて抗議しようとした口に、意味のある言葉を紡がせない。 強く竿を握り、上下に扱き、先端に親指を立ててぐりぐりと抉る。
「う…ぅん…あっ…ああ…ん」
 目をぎゅっと閉じ、快感に身を強張らせて耐えているイルカの顔を、カカシはじっと視姦した。 唆る。 堪らない。 ぬるぬると先端の汁を全体に擦り付けるように扱き、追い上げた。
「あああっ あ、ああっ も、だめっ離し、て…」
 イルカは足先をぴんと引き攣らせると、白濁を飛ばした。 はぁっはぁっと荒く息をつくイルカが我を取り戻す前にズボンを剥ぎ取り、自分も上着を脱ぎ捨てる。 先程自分が引き裂いた上着が引っ掛かる上半身がとても淫らで、カカシは吐息を零してその身体を眺めた。 イルカは、確かに華奢だが引き締まった鑑賞に堪える体をしていた。 胸が上下し、汗ばむ肌が艶めかしい。 改めて全身を掌で撫で、接吻けして刻印を刻むと、カカシは先ほどの滑りを手に取りイルカの後ろに擦り付けた。 2・3度入り口を擦ると直ぐ指を一本差しこむ。 イルカはびくっとして目を見開いたが直ぐにまたぎゅっと閉じるとカカシの背中に縋り肩に顔を埋めてきた。 顔を見られないのが残念だったが、カカシも限界だった。 イルカの中は熱く、狭く、カカシの指をきゅうと締め付けてきた。




          イルカ 14

 カカシの指が、探るようにイルカの中で蠢く。 先ほど自分がカカシの手で達かされた時、カカシが自分をずっと見ていたのを感じていたがどうすることもできなかった。 今度は恥ずかしい顔を絶対見られたくない。 異物感に耐えながら、カカシの肩口に顔を押し当て、肩甲骨に指先が食い込むくらい縋りつく。 カカシは指をぐりぐりと回しながら、イルカの耳元で囁いた。
「ここであんたを愛するよ」
「知ってますっ」
 顔を押し付けたまま小さく叫ぶ。 もうそれ以上言わないでくれ。
「ここに俺のを突っ込んで、ぐりぐり掻き回して、奥の奥まで突いて、あんたを悶えさせてあげる。」
「…!」
 イルカは堪えきれずに顔を上げると、ぎっとカカシを睨んだ。
「もう、その恥ずかしい口を閉じてくださいっ」
「ふふっ やっと可愛い顔が見れた。」
 にんまり笑うカカシにしてやられたと判って慌てて顔を元に戻す。 ああ、もっと見せてよ、と残念そうに楽しそうに言うカカシの余裕振りが悔しくて、イルカは肩越しにまた叫んだ。
「あなたは意地悪ですっ」
 もう絶対顔なんか見せてやらない。 イルカがそう決心した時、カカシの指がイルカのシコリを探し当てた。
「ああ!」
 あっけなくカカシの肩から顔を離して仰け反るイルカをカカシは満足そうに眺めた。
「ここ?」
「ああぁ、や、やめて、な、何? ぁああ!」
 背が反り、腰が浮くのを止められない。 萎えたイルカのモノがまた力を取り戻し、腰の間で震え始めた。 それをまた握られる。
「俺、他人のモノにこんなに興奮するなんて思わなかった…。 アンタの勃ってるの見るだけで達きそう。 ね、俺も一度達っときたいんだ。 いいよね」
 カカシはそう言うと、自分のモノを取り出した。 それは既に隆々と猛っていて雫を零していた。 イルカは息を呑んだ。 自分だってそんな風になった他人のモノを見るのは初めてだった。 しかもそれは、自分に対して勃起しているのだ。
「ああ…」
 カカシが呻いた。 自分のモノとイルカのモノを併せて握り擦りだしたのだ。 何をされているか全く頭が受け付けなかったイルカも、カカシの呻き声ではっと我に返った。 途端にゾクゾクっと強烈な快感が這い登る。
「う、ああ」
「い、イルカ…」
 肩口に顔を埋め、息を荒くして呻くカカシ。 ぬちゃぬちゃと濡れた音。 擦り合う刺激。

---こんな、こんなこと…!

「ああ、ああ」
 なんて淫らなんだ、と意識したと同時に思考が吹き飛んだ。
「や、いや、ああ」
「うう、あ、イルカ」
 扱く激しさが増し、カカシの食い縛った口元を滲んだ視界に見つめながら、イルカは上り詰めた。 同時にカカシの感極まった呻き声が耳に吹き込まれる。 二人分の粘液が自分の腹にぶちまけられた。




          カカシ 12

 はぁっはぁっと胸を弾ませ、目元を赤く染めて喘ぐイルカの顔を、自分も大きく胸を喘がせながら見た瞬間、頭のどこかのネジが飛んだ。
「やらしい顔… あんた、すっごいヤラシイよ」

---めちゃくちゃにしたい!

 出したばかりのはずの自身が痛いほどまた膨張してくる。 カカシは乱暴にイルカの片足を肩に担ぎ上げて腰を抱えた。 そして右手の指を纏めて二本イルカの後口に捩じ込むと、闇雲に掻き回した。
「ああっ い、いあっ あっ」
「挿れたい… 今すぐ、あんたに、俺を…」
 乱暴に注挿させ時折指を開き、すぐに三本に増やす。 イルカは苦しげに全身から汗を噴出し、喘ぎ声さえ微かになって身体を震わせるのみとなっていた。 指を根元まで捩じ込みぐりぐりと何回も回す。 滲み出す体液にアナル全体が滑り楽に指三本が回り出したが早いか四本目も捻入れた。
「あ… あはっ あ…」
 目を見開くイルカの目は既に焦点を失っていた。 溢れて止まなかった涙も途切れ、口を大きく開いて仰ける身体が一瞬動きを全て止め、呼吸さえも止めて強張った。
「イルカ…! イルカ、ごめん」
 それでも自分を挿れるには狭いのだ。 ぐにぐにと揉み解すように指を蠢かしてから、カカシは自身を宛がいイルカの両足を抱え上げた。
「いくよ」
 ぐっと先端をめり込ませる。
「くっ きっつっ」
 目の前がちかちかするほどきつい。 イルカは荒く息を吐き、全身から玉の汗を噴き出していた。
「息、吐いて。 力抜いて。」
 カカシはイルカの腹や腰を撫で摩り、ふぅふぅと息を吐く青ざめたイルカの顔を見た。 愛おしさが込み上げる。
「痛いよね、ごめんね」
 まだ途中だったが、それ以上突き入れることを続けられなくなり、カカシはイルカの頬を撫でた。
「い…いた…い」
「うん、ごめん」
「うれし」

---え?

 驚いてイルカの顔を見ると、浅く呼吸を繰り返しながらなんとか身体から力を抜こうと健気に頑張っているイルカが、引き攣ったような笑みを自分に向けている。
「すごく…痛い… 俺、今度はきっと… 忘れない」

 嬉しい。

 セックスをしながら泣いたのは初めてだった。 イルカが、続けて、と掠れた声で言い募る。 震える手が自分の肩にそっと掛かった。 それを掴んで、カカシはイルカの腰を抱え直した。





          イルカ 15

 カカシの動きが激しくなる。
「あ…あくっ…ぅうっ…うんっ…」
 イルカは呻き続けた。
 快感には程遠い痛みだった。

 ----バカな人…

 ずっと我慢していたらしいカカシは、イルカの中にようやっと全てを収めると、初めこそゆっくりそっと腰を揺する程度だったが、直ぐに動きが大きくなった。
「あぅっ…くっ…ぅん…あ…」
 眉間に皺を寄せ、呻くイルカの太腿や腰をカカシが摩る。 額から汗が滴っている。 労わろうとしてくれている。

 ----自分も辛いみたいなのに

 イルカは浅く息を吐き、どうにか身体の強張りを少しだけ緩める事ができた。 カカシに快感を感じて欲しかった。

 ----なんてバカでやさしい人…

 イルカにとっては初対面の、とてつもなく凄腕らしい暗部の男。 性経験は豊富らしいのに恋愛経験は無いらしい、会って直ぐにセックスを迫る一般常識の無い男。 優しくて強引でどこか幼い、アンバランスなこの男を、イルカはバカでかわいいと思い、愛しいとさえ感じていることに驚いていた。
 その時、黙々と腰を動かしていたカカシが呻いた。
「うっ…ぁあ、きもちぃ…あんたの中」

---気持ちいい? 俺、気持ちいい?

 今までされるがままでマグロ状態だったイルカは、多少後ろめたくもあったのだが、余りの痛さにこれがセックスであることさえ忘れかけていた。 早く終わってくれることを内心祈りさえした。 が、カカシの感じている様を目の当たりにして突然、繋がった部分がざわりとし、痛みではないモノを拾い始めた。




          カカシ 13

「あ……あぁ…ぅん……ああ…」
 突然、色を帯びた声を発し始めたイルカに、カカシは内心ほっと息を吐いた。 先ほどまでは、苦しげな呻き声しか上がらなかった。 かわいそうだと思ったが、内部は大分慣れてきてはいたし、熱く絡まるイルカの秘所が気持ちよくて止められなかった。
 ざわり、ざわりとイルカの内部が顫動する。 耳から入るイルカの喘ぎ声にも煽られる。
「ううぅ、やばいっ」

---達っちまう、もう少し味わっていたいのに

 カカシが声を漏らしたのと前後して、イルカの内部がきゅうと締まった。
「あぁっ………ぁあん」

---どうしたんだ、どうしたんだ、すごい色っぽい、うぁー

 締め付けとイルカの声にドクっと心臓が鳴り、イルカの中に放ってしまった。
「あ…?」
 イルカがぼんやり目を開ける。
「あつい」
「うん、あんたの中で達っちゃった。 ごめん」
 でも、とゆさりと突き上げると、イルカはうっと呻いてカカシを見た。
「あ、まだ大きい?」
「うん、達ったんだけど萎えない。 ふふふっ」
 カカシが自身をぞろりと引くと、繋がった部分からぐちゅりと音がする。
「俺ので潤ったし、そろそろ本番行っていいかな。」
「そんな…」
 イルカはショックを受けた様子で自分を見上げてきた。



BACK / NEXT