死がふたりを別つまで  -妖狐の廟-

- Until Death Do Us Part. -


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               生贄 二


 妖狐は不敵に笑うと、海野の体についた自分の精液を体に擦り付けるように伸ばし始めた。 胸から鳩尾、脇腹、首筋、海野自身にも丹念に塗りこめ、滑る指先で胸の突起を捏ね上げる。
「あぁぁ、や、やめ… うん、んん、んぁっ」
 海野自身があっという間に力をもってそそり勃った。 体の中、先程まで妖狐にこれでもかと犯されていた処から湧き上がる、痒みにも似たもどかしい感覚、精液を塗られた肌のぴりぴりとした熱さ、下腹に溜まる抑えがたい欲望の渦、それらが一度に襲ってきて海野は身悶えた。
「かわいらしく勃ってきたぞ。」
 妖狐は海野を根元から掴むと、己の精と海野の先走りが交じり合う卑猥な図を舌なめずりをして眺めながら数回上下に扱いた。
「うぁっ ぁぅぅ やめ、やめろっ」
 先程までは呻くだけで抵抗はしなかった海野が突然暴れだした。 痛みより快楽に弱い性質らしい、と気付き、妖狐はこれは楽しめそうだ、と下卑た嗤いを海野に見せ付けて片手でその体を抑え込むと、握った海野の先端をべろっと舐めてからぱくりと口に含んだ。
「や、やめっ ぁああっ」
 背を撓らせて喉を晒す海野の媚態を美味そうにながめながら、大きく口を上下させて2・3度吸い上げると、海野はあっけなく初めて精を放った。 妖狐はそれを全て口で受けごくりと飲み干すと、更に根元から先端に搾り取るように吸引した。
「あっああああああっ あぅ、いや、いやだ…」
 体がビクビクと痙攣するように震えている。 妖狐は新たな精がまた体に漲るのを感じた。 美味い精だ。 体の相性もいい。 もっとだ、もっと欲しい! こいつの全ての精を搾り取り、淫らな精気を吸い尽くしたい。 それには、もっとこいつを淫らに悶えさせなければ。 まだ足りない。 こいつは俺の精を注がれ浴びながら、まだ正気を保って俺を拒んでいる。 なんという精神だ。 だが、と妖狐は荒く息をつき上下に胸を喘がせて呆然としている海野の桜色に火照った肌や、もう再び力を取り戻しつつある海野自身を眺めながら思った。 敏感な体だ。 快感を素直に端から拾っていく。 それに気持ちが付いていっていない。 痛みには強いようだから、ここは優しく攻め落とそうか。

 胸の突起を両手で摘まみ、強く引っ張り上げてから上下にくにくにと揉む。 乳首がすぐに立って尖ってくる。 指の腹で尖りを擦り、交互に舌でも舐めて濡らしたりちゅっと吸ったりしながら海野の反応を見る。 最初は痛がっていた海野も、直ぐに艶を含んだ声を漏らして体を捩りだした。
「い、いた…あ、ぁぁ、ん、やめ……」
 自分の声が堪らないのか、腕を口元に持っていって耐えるが、少し強く押しつぶすと、あぅっと喉を仰け反らせる。
「もう、こ…殺せっ 最後は喰らうんだろう、も…ぁ…充分、た、たの…」
「楽しんだろうって?」
 妖狐は舐っていた乳首から顔を上げると、海野を下から見上げた。
「おまえ、妖狐がどんな妖魔か解ってないだろう。」
 ずいっと海野の胸の上まで乗り上げると、全く衰えていない猛った妖狐のモノが海野の股間を押した。
「どうして火影が何十年も俺に女を貢いできたか、解らないのか?」
 そのままぐりぐりと先端を擦り付けながら、妖狐はそこらじゅうを舐めまわした。
「俺達は精を吸う。」
 自分と海野の間に手を突っ込み、挟まれ擦られて硬くなっている海野自身をぎゅっと握ってゆるゆると上下に扱き出す。
「あっ ああ、んぁ、ぁ…やめ、離し、て」
 海野の顔をべろべろ舐めまわし、厭らしい顔でじっくり舐めつけるとゆっくり下に降りてゆく。 海野は先程された口淫を思い出し、とっさにその顔を両手で挟んで止めようとしたが、その掌や指の股をまた舐められてびくっと手を離してしまった。 妖狐の唾液にも媚薬効果があるのか、そこから直ぐに火照ってくる。
「おまえの精は今までの誰より美味いぞ。」
 妖狐は海野自身に頬刷りをすると片手で竿を掴みもう片方の手で陰嚢を揉みしだき、大きく口を開いて海野のペニスを口中に収める様が海野からも見えるように腰を持ち上げ両足を肩に担いだ。
「それから気も吸う。 人間の発する淫らで貪欲なオーラだ。」
「ああっ! いや、いやだ、ぁあ」
 先端を舐め、口を窄めて吸い上げ、カリの縁にそって舐めあげると海野の腰がふるっと震えた。 先走りが沸々と沸いてくる。 先の割れ目に舌を捩じ込みぴちゃぴちゃと音をたてて舐めながら見上げると、海野は固く目を閉じ顔を背けて歯を食いしばっていた。
「見ろ。」
 腕を伸ばして顎を掴むと、ぐいとこちらに向けて低い声で唸る。
「おまえが俺にどんな風に犯されているか、しっかり見ろ。 そして感じろ。」
 頑なに目を閉じて嫌々をする海野の顎を軋むほど掴んで2・3度揺すると、ゆっくりと薄く瞼を開く。 黒い瞳が水に潤んで光り、眦からころりと水滴となって零れていく。 こちらを見た瞬間を見計らってべろりと大きく舐め回すと、海野は切なげに眉を顰め、ひくりと体を震わせてまた目を閉じた。 
「ぁぁ、は、はぁ」
 ぴくぴくと震える太腿が限界を教える。 妖狐は頂点を先延ばしするように緩く舐ってじれったい刺激を長く与え続けた。
「あ、ああっ ぅ、ぅん、やめて、くれ、もう、もう…」
 海野は壮絶な色気を発しながら身悶え、頂点を望んで腰を淫らに揺すりながらもそれを口にしなかった。 妖狐は海野から一旦口外すと、そんな海野の回りの淫靡な空気をすうーっと鼻から大きく吸い込み、ああ、と溜息をついた。
「美味い…」
 海野のモノは張り詰めてぴくぴく脈打ち、涙を零し続けている。 妖狐は陰嚢を揉む手を離し、いきなり竿を掴むと、2回、3回と少し乱暴に扱いてぎゅっと根元を握った。
「ああっ ああっ あああっ うっ んーーっ」
 海野はのたうつ。 肩で息をし頭を振り乱し、腰を揺らす。 妖狐はまたすーっと海野の淫らな気を吸った。
「おまえが淫らに悶えるオーラが美味い…。 最高だ。」
 海野自身を握ったまま、首筋まで伸び上がって耳裏の匂いを嗅ぎ、また少し海野のペニスを扱いた。
「ぁああっ うっ うう」
 海野はすすり泣き始めた。
「お、願いです…も、殺して…」
「達かせて、の間違いだろう?」
 尖った乳首に吸い寄せられるように舌を這わせ、1回、2回と緩く海野を扱く。
「ぁん、うぅ、…殺して、ください」
「達かせて、とひとこと言ってみろ。 そうしたら」
「ころして」
 快楽に胸を喘がせているくせに、嫌だ殺せとしか言わぬ口。 妖狐は無性に苛つく自分を止められなかった。 殺してなどやるものか。 このまま活かさず殺さず、ずっと嬲って悶え続けさせてやる。 それがおまえには一番苦しいんだから。
 もう一度海野の腰まで沈むと、じゅるじゅると音をたてて口淫し始めた。 びくっびくっと痙攣する腰を両手でしっかり抱きこみ、一際強く吸い上げる。 海野は細く叫びながら長い頂点を極めた。 海野自身がまだひくひく震えて精を吐き出し続けているうちに、また根元からちゅうっと吸い上げ、最後の一滴まで搾り取るように何度も上下させると、海野が体を引き攣らせ声も出せずにのたうった。 苦しかろう。 苦しめ! 妖狐は昏い愉悦に身を浸した。

 妖狐は海野をひっくり返すと、尻を高く持ち上げて海野の秘所をべろりと舐めた。 今度は自分の雄を満足させる番だ。
「此処を癒してやる。 さっきはひどく傷にしたからな。」
 海野はくたりとして為すがままになっていた。 血の味のする幾つもの裂傷を、唾液を塗りこめるように丁寧に舐める。 そう言えば海野の血を初めて味わう。 自分の精と混じっていたが、それは非常に甘美な味だった。 思い切り啜りたい。 たっぷり楽しんだら喉を噛み切って啜ってやる。 でもその前にと、妖狐は熱い海野の中の感触を思い出していた。 あれを心ゆくまで味わってからだ。 接吻けるようにそこを含み、舌で襞を伸ばしては尖らせて中に捩じ込む。 それを飽きもせず繰り返していると、海野が床の敷物を掴んで掻き毟りだした。
「ぅ、ぅぅ、ん」
 顔は腕に埋めていたが、くぐもった喘ぎ声が漏れ聞こえてくる。 本当にそそる声だ。 妖狐は猛る自身をすぐにも突っ込みたい衝動に駆られたが、もう少し、と自分を抑えた。 痛みではなく、快感を味わわせなければダメだ。 コイツの乱れる様とオーラはすごく美味い。 喘ぎ声を耳にし、媚態を目にしながら気を吸い込むだけで全身に生気が漲るのを感じるほどだ。 本当によい獲物を手に入れたものだ。 火影に感謝しなければ。 妖狐はくくくっと嗤うと海野の前に手を回し、彼自身を掴みあげた。 それはもう既に固く立ち上がっていた。 前を掴みながら、少し緩んできた蕾に舌を抜き差しする。 海野の腰がゆらゆらと揺れた。 なんて淫らな。 舌と一緒につぷりと指を1本忍び込ませると、それは抵抗なくするすると飲み込まれていった。 指をゆるく注挿し、合わせるように前も扱く。 海野の手が敷物を強く掴んで引き寄せ、皺を作ってゆく。 汗ばみ震える背中に頬を乗せると、しっとりと吸い付くようだった。 指を2本に増やし深く突っ込んでくりっと曲げながら、海野自身の先端を親指で抉る。 海野はあっと短く叫ぶと、簡単に射精した。 射精直後の性器への刺激を怠ることなく、アナルへ入れた指もぐりぐりと中を掻き混ぜる。 時折きゅうと指が締め付けられると、自分のペニスが締め付けられる感覚を想像して、突っ込みたくて堪らなくなった。
「う、うふっ ふっ ぅぅ」
 海野は嗚咽を零していた。 気配は淫らだったが、どこか淫らになりきれない嫌悪のようなものが混じっていて、あまり美味くなかった。
「俺を突っ込んで欲しいか?」
 海野の背中に覆い被さり、殊更優しく耳元に吹き込むように囁くと、海野はふるふると首をふるばかりで、尚も泣き続ける。 指を一旦引き抜くと、3本まとめてずくっと突き入れ、前も強く扱く。 あうっと背を撓らせようとする体が妖狐の胴体で止められ、首だけが仰け反った。 妖狐はすかさずその首筋に喰らい付くと、そのまま体を前後に揺すった。 海野の中の指がぐっぐっと中を突き、性器を握った手が竿をすべる。 海野はぶるぶる震えて耐えていた。
「俺のをここに突っ込んで、思い切り掻き混ぜてやろう。 おまえの好い所を好きなだけ突いてやる。 一言「入れて」と言ってみろ」
「ふ、ぅぅ、ぅふ、ころし、てぇ…」
 妖狐はカッとなって指を乱暴に抜き去ると、一気に海野を貫いた。
「あああっ」
 背を撓らせ海野が叫ぶ。
 妖狐は、またしても自分のほうが先に屈してしまったことに無性に腹がたった。 もういい。 多少不味くても、回数をこなせば腹も膨れる。 そして望みどおり喰らってやる。
 その後妖狐は、無言で延々と海野を貪り続けた。 





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