嵐の夜に


5


 男がそこを擦る度に息ができなくなった。 すぐに白む意識。 だが激しい注挿に気を失うこともできず、ヨウスケはただ泣いた。 あの嵐の晩、その初めて味わう感覚に翻弄されて訳も判らず男の言いなりになった記憶と現状が、その朦朧とした頭の中で混じりあって襲ってきた。

「あ、い、いや、ああ、も、そこ、いやぁっ」
「ああ… すごく好いですよ。 あなた随分仕込まれましたね」
「やう、うんっ ん、んぁっ やめ、てぇ」
「唇も吸い心地がいい。 ほら、舌を出しなさい」
「んんっ いやだっ あっ ああっ ああっ」
「いい子に言う事を聞かないとこうですよ」

 唯でさえ苦しい呼吸を更に奪うように口を塞がれ、絡めれる舌から逃げるように自分の舌を引っ込めると、男は一頻り激しく奥を突いてきた。 身体の痙攣が止められない。 やめてくれ、やめてくれと、何でもするからやめてくれと、それ一色に意識が塗り潰されていく。 男は、ヨウスケの精神が堕ちた事が判るのか、奥の突き上げを緩めると浅い所を掻き回すようにして猫撫で声を出した。

「ヨウスケ」
「あ… はぅ、ふ… や、やめ… も、そこ、突かな…でぇ」
「舌を出しなさい」
「ん、ふっ うう」
「いい子だ」
「んむ、んん、は、あふ」
「そう、舌を絡めて、もっと」
「んん、んーーっ」

 絡めた舌を痛いほどきつく吸われて顔を顰めると、男はブルッと腰を震わせた。

「うう… イイ。 あなた、こうして舌をきつく吸われるとアナルが締まるんですよ。 乳首もね」

 そう言って両方の乳首をチクチクと抓るように捏ねられる。 きゅっと引っ張られると痛みと共に腰まで突き抜ける痺れが走って背筋が震えた。

「あん、んんっ」
「ほら、ああ、にゅるにゅると嘗め回してくる。 いやらしい身体だ。」
「ん、ふ、んん、もう胸、やめて、痛い、あうっ」
「痛いんじゃないでしょ? ほら、ほら、気持ちいいんでしょ?」
「んんっ いや、痛いっ しないで、いやぁ」
「素直じゃないね」
「そ…な、あ、ああ、あうう、ううー、はっ あっ いやぁ、ああ」

 また奥をあの凶器が襲う。 同時に乳首も痛ぶられ、上半身と下半身が別々に感じているのにそれが一気にアナルへ集まり、収縮運動となって現れた。 ヨウスケはそれを、上で呻く男の声で知らされた。

「ああ、イイ」
「いやぁーっ ああーーっ そこいやーっ」
「乳首、気持ちいいですよね?」
「うん、イイ、いいです、う、うふ…」
「泣くほどいいですか」
「いいです、いいですから、もうやめ、あ、あ、ああ…」
「ここ、擦られるとどうしようもなくなっちゃうの、あの夜のまんまですね。 さて、そろそろ白状してもらいましょう」
「は…あ…あ…」

 嵐のような突きの後、また緩くあやすように律動されながら何か要求されると、もう何も判らず従ってしまう。

「誰と誰に抱かれてたんですか?」
「た、立川、君と… コ…キチさ…に」
「それから?」
「ん、そ、それだけ、あ、ああ、ああっ」
「嘘を言いなさい。 このアバズレっ」
「ああっ いやぁ、やめてぇ」

 答えが気に喰わないとまた襲ってくる凶器。 ヨウスケは必死になって嘘ではないと訴えた。

「他には?」
「ほ、ほんと、です、あ、ほんと」
「ふん、本当らしいな。 で、何時から?」
「あなたが、か、帰った日の、夜に、ふ、二人が、来て」
「あの翌日すぐに?」
「は、はい」
「ったく! あんたも抵抗くらいしたんでしょうね? え?」
「あ、く、薬、使われて、俺、俺…」
「薬? ふーん、意外と姑息な事する人達なんですね。 それで、なんで今までおとなしくしてた連中が、いきなりそんな暴挙に出たの? あなたが誘ったんじゃないでしょうね?」
「ち、ちがっ お、俺が、変わったって」
「変わった?」
「あなたに、抱かれたんだろうって、一目で判ったって、そう、言われて、それで」
「…なるほど、俺の自業自得って訳ですか」

 なら仕方ないか、と男がヨウスケの足を抱え直したので、ヨウスケは真っ青になった。

「あ、や、いや、も、もう許してぇ」
「なに言ってるんです、これからですよ?」

 ヨウスケの嫌がる場所を態と擦りつけるように腰を使いながら、男はぶつぶつと一人言ちた。

「やっぱり、あの時あなたを強引にでも連れていくべきだった。 いきなりフランスじゃかわいそうだと情けをかけたのが、逆に仇になるなんてね。 でも今度は連れて行きますからね。 ヨウスケ?」
「い、いやだぁ、ああ、ああっ」
「嫌じゃない、返事は「はい」です。 私と行くね? ヨウスケ」
「いやぁ、離して、抜いてぇ」
「聞き分けのない子には…」
「あっ ああ…… あ、ああ、あや、やぁ、は、あ、あは、ん、んんー」
「ああ、素敵だヨウスケ。 最高の身体だ!」
「い、いや、あ、あん、んん」
「ほら、ここだ、ここがいいんでしょう?」
「うあっ あああっ あああっ」
「私と行くかい? どう? ヨウスケ」
「あ…ああ……」
「もう言葉が出ないみたいだね。 かわいいよ、ヨウスケ。 頷いてごらん。」
「う、う」

 終わりの無い責め苦に唯ひたすら拒否の叫びを上げて身体を捩り暴れると、男があの場所にヒタリと先端を押し当ててグリグリと抉ってきた。 断続的にしかできない呼吸。 痙攣し続け、手で触れられるだけでヒクリと震える身体。 奥の奥から湧きあがってくる抑えられない快感の波に飲み込まれ、もう何も判らなかった。 頷けと言われ、男の腕の中で条件反射のようにコクコクと首を振ると、その腕がぎゅっと締まり顔中に接吻けられた。

「そう! いい子だね! さぁご褒美だよ!」

 また襲ってくる。 あの凶器が気が狂うほどの快感を自分に与えてくる。 ヨウスケは唯の喘ぐ淫売のように乱れて泣いた。 どうしたらこの甘い地獄から逃れることができるのだろう。

「あ、や、は… そこ、やぁ… ゆ、ゆるして… ねが…」

 ヨウスケは唯懇願した。 それしかできなかった。

「許さないっ 許さないよっ 私のヨウスケ! ずっと突いてあげる!」
「あ、や、いやぁーーっ」

 だがそれさえも男を煽り、責めが激しくなるだけだった。

               ・・・

   「いやぁーーっ」

「…」
「…コ、コウキチさん…」
「ん、行こう、立川君」

 夜の静寂に微かに響いてくるヨウスケの叫び声に、丘を一緒に登っていた二人は走り出した。 嵐は大分収まっていた。 立川は勤める小学校の生徒達の安全確保のために、コウキチは旅館の責任者として、今宵、約束通りヨウスケの家を訪れることができなかった。 だが、前の嵐の晩のこともあり、どこか嫌な予感がするとヨウスケの家への丘の麓へ来てみれば、同じ事を考えた相手とばったり会った。 丘を登れば登るほど鮮明になっていくヨウスケの悲鳴。 家の前に車が一台止まっているのが見えた。 立川が、息の上がったコウキチを置いて一散に駆け出した。 ヨウスケの家の玄関に鍵はかかっておらず、ドアを押し開けると同時にヨウスケの悲鳴が辺りに響き渡った。

「いやぁーーっ ああっ もう、もう許してぇーっ」




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