春雪
6
***
気がつくと、片肘をついて顔を支えた山城が、イルカの髪を緩く梳きながらじっと顔を覗きこんでいた。
すぐに状況が掴めずに、イルカがぼーっとして山城の顔を見ていると、髪を撫で付け、頬を擦り、顎から首筋を緩く撫でて、大丈夫?と問うてくる。
---大丈夫って何がだろう?
イルカが僅かに小首を傾げると、鎖骨の辺りを指で辿っていた手が徐にイルカの乳房を掴み二三度緩く揉みあげた。
「俺としたこと、覚えてます?」
問われて俄かに己の痴態を思い出したイルカが、ぼっと頬を染めると、山城は嬉しそうに、思い出してくれましたか、と言ってイルカを抱き寄せた。
「何回か達かせれば、あなた変化を解くかと思ったんだけど、なかなかどうしてしぶといですね。」
失神しても解けないなんてね、と溜息とともに言われ、変化が解けたらどうするつもりだったのだろう、と怖くなった。 カカシのお陰で変化は解けずに済んだようだったが、怪我の功名とはこのことだな、とまた呆けたことをイルカは思った。
「ここに何かチャクラを感じるんですが、これの所為かな。」
山城がイルカの秘部に指を入れてクルリと回す。 自分の体をカカシではない男に好き勝手にされて激しい抵抗を覚えたが体は重く動かず、代わりにひくっと戦慄いて体を揺らすと、山城は指を抜き差ししてくちゅくちゅと卑猥な音をイルカに聞かせてきた。
「俺のチャクラで相殺できないかな、とも思ったんだけど」
動かされる指先がじんわり熱を帯びたような気がして、イルカは青褪めてふるふると首を振った。
「まぁ、あなたを傷つけたくないし、止めておきました。」
ぱちっと瞬くとぽろっと零れる涙。
「ああまた泣いて。 しませんから、泣かないで。」
---そうだ俺、この男に抱かれて突っ込まれて、さんざん泣かされて達かされたんだ。
思い出してきて、また目に涙が盛り上がる。 カカシはどうしているだろう。 天井裏でまんじりともせずにいたのだろうか。 微塵も感じない気配に返って不安が募る。 もしかして、もうどこかへ行ってしまったか。 見られたくない、と切に願う反面、カカシが居なくなるということがカカシに切り捨てられることのように感じられ、イルカは涙ぐんだ。
「う…ぅふっ…ふ…」
嗚咽を漏らして肩を震わすと、山城はイルカの体に覆い被さるようにして体重を預け、イルカの肩口で苦しそうに懇願した。
「お願いです。 そんな風に泣かないで。 あなたに泣かれるとどうしたらいいか判らなくなる。」
ねぇイルカさん、俺を覚えていませんか、と山城はイルカの気を逸らそうとするかのように話し始めた。 思い出してくれたら嬉しいなぁ、と言う切なそうな山城の目がカカシに重なり、イルカはしゃくりあげながら遠い記憶を探ったが何も思い当たるものは出てこなかった。 七年間あなたを探しました、と山城は言う。 まさかアカデミーの教師になっていたとは盲点でしたけど、と。
「俺は職権乱用して、木の葉の上層部をある事件で追い詰めました。 それで、あなたを差し出すなら一切を不問に処しましょうと持ち掛けると彼らは非常に慌てた。 二つ返事で了承すると思ったんですけどねぇ。 中忍一人の身柄と開戦の危機を量りにかけたら考えるまでもないと、楽勝であなたを国へ連れ帰れると思ってたんですけど、何が障害だったのかなぁ。」
カカシだろうか、とイルカは思った。 カカシに暴れられたら困る、と。 それともやはり…。
「写輪眼のことは調査済みだったので、その所為かと思いました。 ですから、あなたを一晩だけ貸し出すからそれで手を打ってくれ、という打診がきた時は正直吃驚でしたよ。 どちらにせよカカシが納得するとは思えなかったから。」
何故なんでしょうね、と山城は面白うそうに嘯いた。
---何か自分も知らないことを知っている?
イルカにはそう感じられて山城をまじまじと見つめると、山城はふふっと笑ってイルカの胸をぷるっと揺らし、そのままやんわりと感触を楽しむように揉みだした。
「そんなに見つめて。 俺のこと思い出してくれました?」
イルカは、山城に自分を私物のように扱われ勝手にいいようにされるのが嫌で、その手を掴んで肩の辺りで抱え込んだ。 山城はされるままイルカに手を預けている。 仮にも自分は忍だ。 山城もそれを知っている。 そして直ぐ頭上には写輪眼のカカシが居る。 それなのに敵に自分の利き手を預けて笑っている。 その余裕が空恐ろしかった。
「もっと早くあなたを見つけられていたら、あなたを俺のものにできたかな。」
山城はまた謳うようにイルカに問うてきた。 だがそれは、そんな自信有りげな態度とは裏腹に、言っていて無理なことを既に知っている者の口調のように聞こえた。 イルカがふるふると頭を振ると、はぁと溜息を吐いて、やっぱりねぇ、と零す。 この男の真意がどこにあるのか、さっぱり判らなかった。
「あの男より早く出会っていたら、それでもだめですか?」
「ごめんなさい」
即答するイルカにがくりと項垂れ、切ないなぁ、と笑う。
「あなたを連れて帰りたい。 一緒に来てもらえません…よね。」
山城は自信無さげに言うと、なんなら力尽くで、と拳を握って見せたが直ぐまた脱力して、だめですよね、と呟いた。 この人が本気になれば、自分を拉致ることなど本当は造作も無いことなのかもしれない。 どうしてこんな回りくどい事をするのだろう。 唯抱きたいだけではないはずだと思っていたが、山城の態度と口調は恋する者を口説く唯の男のそれだった。 接吻けも、なんだかんだ言って一回も無理矢理奪うようなことはしてこなかった。
「これで許してください」
強引で無謀な事をやっているにも関わらず、意外に真摯な態度を貫く山城に絆されたのだろうか。 それとも、決して応えられない望みにそんな子供騙しの所業で穴埋めしようと、分不相応にも考えたのだろうか。 イルカは自分でも自分の気持ちが理解できないままそっと伸び上がると、山城の頬に唇を近づけた。 山城が、ぎくっとして一瞬身を引き瞠目する。 忍なら当然か、と思い直しイルカも身を引きかけると次の瞬間には唇を奪われていた。
「う…ぅん…」
しまった、とイルカが抗うと、山城は強い力でイルカの両手を縫い止め、激しくイルカの唇を貪った。
---これができたのに、この人は今までしないでいてくれた。
そう思うと、自然に体からは力が抜け落ちた。
ごめんなさい、カカシさん。 唇だけは死守しようなんて、甘い考えだったのかもしれない。 今回に限って何故こんな甘えたセンチメンタルな意地を張ったのか。 やはり山城の情に自分も流されていたのだろうか。
長く激しい接吻けに、イルカは喘いだ。 顎を取られ、何度も角度を変えて押し付けられる山城の唇はどこか固く感じられた。 唇を吸われ、口中を舌で思う様蹂躙されて意識も朦朧とした頃、山城がやっと口を離し嬉しそうににっと笑った。
「俺、やっぱり諦めませんから!」
今ので勃っちゃいました、と付け足され、また体中に接吻けを落とされる。 今度は唇にも遠慮がなく、何度も戻ってきては唇を併せてきた。 乳房を揉まれ、乳首を口に含まれ、脇腹を撫でられ、段々下りてゆく山城の頭をはっとして押さえようとしたが、山城はがちっとイルカの腿を抱き込んで既に秘部に顔を沈めていた。
「い、いやっ あっ」
差し込まれる舌の感触は指とは違いざらりとしていて、それでクリトリスを舐められるとそれだけでびくびくっと震えてしまう。 急速に追い上げられ追い詰められて、イルカは喘ぎ身悶えた。 性器のそれを模した抜き差しを舌でされ、尖ったクリトリスをざらりざらりと舐められ、はぁはぁと喘ぎながら身を捩りのたうつ。 シーツをきつく握り締めて耐えるが、ある一瞬を越えた時、ざざっと肌が総毛立ちイルカは一気に登り詰めた。
「ぁあっ ああーーーっ」
びくり、びくり、と震えるクリトリスを更に舐められ、イルカは反射のように体を痙攣させ、泣いて許しを請うた。
「い、いやっ やめっ っねがい ぁぁ」
---舌で達かされた!
ショックで啜り泣きながら、呆然と宙を見つめるイルカの唇を再度荒々しく貪ると、山城は口を併せたまま自分の昂ぶりをまだ震えるイルカの秘所に突き立てた。 抱き締められて身動きもとれず、口は塞がれ呼吸も儘ならず、身の内を太く熱いものに激しく突き上げられる。 ガンガンと突き上げられても、抱き締められていて勢いの逃げない衝撃は凄まじく、イルカは今まで山城がどれほど手加減して自分を抱いていたかを知った。
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