聖域
-SANTI-U-
7
La Maddalena
-SANTI-U after-
「カカシさん、唇が、お、大きいです。」
口を塞ぐ唇も、掌も、顔も、いつもより大きく感じる。 がっちりと首裏に回された腕も太く、目の前を覆うようにある肩幅も広かった。
「かわいいこと言うね。 あなたが小さいんでしょ。」
ふふっと笑い、カカシはイルカの唇を啄ばんだ。 元々華奢めなイルカは、尚一層細く小柄で、あらゆる造りが小さくなっていた。 先程から楽しんでいるぽてっと柔らかい唇も、鼻梁を横切る傷はそのままだがその鼻も、顔自体が一回り小さく、肩幅も狭く、必死で抗うようにカカシの胸を押しているのか叩いているのかさえ判らない腕も細く、その力さえ弱かった。
「あ、んん、カカ…さ、話をきい… ん」
イルカが何か喋ろうとする度に塞がれる唇が紡ぐ声は高くか細く、次第に力を失い喘ぎ出している。 胸を押していた手は既にカカシの肩口に縋りつくばかりだ。
---かわいい
これほどかわいいとは思わなかった。 今までもしてもらおうと思わないでもなかったが、やはり有るがままのイルカが愛しい。 イルカ自身も嫌がることが目に見えていたので、敢えて頼んだことはなかった。 だが、これはどうだ。 男として、恋人として、このままみすみす放っておくなど愚の骨頂ではないか。 イルカにはかわいそうだが、この期を逃すことはできない。 このまま頂かせてもらおう。
「あっ ……」
イルカは小さく叫ぶと息を呑んで、顔が小さくなった分零れんばかりに大きく感じる黒い瞳の目を見開いてカカシの顔を凝視した。 カカシが徐にイルカの胸の膨らみを揉んだからだ。
「カ、カカ、カカシさん…」
カタカタと全身を震わせ出し、イルカは信じられない者を見る思いでカカシを呼んだ。
「なぁに? そんなに震えて。 怖い?」
こくこくこくっと細かく顎を幾度も引いて同意を示し、もうこれ以上は嫌だと告げるために口を開こうとした瞬間、カカシにばくっと口を塞がれ、舌の侵入を許してしまった。 カカシは口中をいつものように思う様犯しながら、イルカの胸の膨らみを乱暴にわしわしと揉みしだく。
「う、んぅ… ぁ、や、んん」
怖い。
体を突き抜けていく、いつもと違う快感が怖い。
いつもより激しく、体の芯を通るような痺れる感覚が怖い。
抗っているのに、びくともしないカカシの大きく感じる体が怖い。
目が怖い。
「んぁっ い、いやです、カカシさん、あ… ひっ」
やっと口を外されて出たイルカの拒否の言葉を無視して、カカシがゆさりと体を揺すり上げた。 太腿にカカシの硬く猛った欲望が当たって悲鳴が漏れる。 なんて太い。 こんなの絶対入らない。 怖い。
「カ、カカシさん、無理です、絶対無理。 お、俺、嫌です、こんなの、お願いだから、ああっ」
やめてください、と言おうとして果たせなかった。 カカシは、まだズボンの中の己の猛ったそれの先端を、やはりまだ着衣したままのイルカの股間に併せて小突き上げてきた。 いつもはそこに有る自分のモノが無い分、ダイレクトにカカシの硬いモノが突き刺さる感覚が襲ってくる。
このまま犯られる。
カカシはそのつもりだ。
「カカシさん…」
イルカは哀しくなって、甲高くか細い声に自分で眉を顰めながら覆い被さる愛する男の名を呼んだ。
「イルカ先生、やりますよ、このまま。 女体のあんたを抱きますから」
観念して。
諦めて目を瞑ると、涙がぽろりと零れていった。
***
あ、危ない
その薬にその薬を混ぜたら…
声より先に体が動いていた。 ぽんっと小爆発をさせて辺りに飛び散ったフラスコの中身から子供の身を自分の体で庇い、イルカは白い粉状の薬を浴びた。 幸い、周りにその子以外の子供はいなかった。 取り敢えず、最悪の事態は免れた。 そう思って、子供らには注意をし、自分は廊下から外に出て体に付いた粉を払った。 少し吸引もしてしまったようだ。
えーと、あの薬にあの薬…
うん、大丈夫だ、たいした効果は無い…はず
イルカが見ていたより前に、もっと他の薬が混ぜ込まれていないとも言えないが、これといって体に変調も変化も無かったので、イルカはそのまま授業を続けた。 だが、変調は職員室に戻った時、現れた。
「あ… う、な、んだ、これ… あうっ」
イルカは急に体がぞくぞく震えだして蹲った。
「おい、どうしたイルカ?」
「うん、さっきちょっと、薬学の授業中に変な薬浴びちゃってさ。 なんか体が変、なんだ。 あっ あああ」
「イー、イルカ? おい、ちょっと誰か! イルカが!」
その場に膝を着いて自分で自分の体を抱え込んだイルカが、ばたりと倒れ伏して呻き苦しみ出したのを見て、同僚は慌てて他の職員を呼んだ。 わらわらと回りに集まり出した同僚達の輪の中心で、脂汗を流して苦しんでいたイルカの体から、突然ぼふんっと白煙が上がり、皆がわっと離れた。
「イルカ? 無事か?」
「…う、うん、大丈夫」
恐る恐る声を掛ける同僚に答えた声は、確かにイルカの声だったがどこか甲高かった。 そして煙が晴れて現れたイルカは、だぶだぶの忍服を着てちょんと座る、女体のイルカだった。
「ど、どうしたんだ? 皆?」
目を丸くして口をあんぐり開けて自分を見つめている同僚連中を訝しく見返し、問うたイルカ自身が口を塞ぐ。
「あ、あれ? 俺の声、なんだかへん…」
イルカはそこまで言うと、ばっと立ち上がって鏡のある所まで走った。
服が、服がなんか緩いし、
回りが何時もより大きく見えるし、
俺の手、なんか細くない?
そ、それにこの、む胸…
嫌な予感に頭を振って、洗面所に辿り着いたイルカはそこで立ち尽くした。
「お、女…?」
顔に両手を宛てて呻いていると、後を追ってきた同僚が追いついてきて叫んだ。
「イルカ! た、たたた、たいへんだ! カカカ、カカシ上忍が…」
「え? ええーーーっ」
どどど、どうしよう。
こんな姿見られたら、あの人絶対…
絶対、このまま閨に引っ張り込まれる!
にー逃げなくちゃ!!
「俺、逃げるから」
後よろしく、と言って同僚の肩を叩くと、
「お、おう…、って、ええーっ? むームリムリムリムリ、絶対無理ぃー!」
という悲痛な叫びが背中に掛けられるが構っちゃいられない。
イルカは逃げた。
・・・
自宅…はだめだ。
アカデミーは既に後にして遠い。
もう一回こっそり戻るってのはどうだ?
灯台元暗しって言うじゃないか
いーいやいやいや、途中で会ったらどうする
あの人、そういう運だけは凄くいいから
それで自分は凄く運が悪い…
ああ、どうするどうしたらいい
森
森しかないか?
暫らく、この薬の効力が切れるまでの間だけでも
なんとしてでもカカシさんから隠れ通す!
硬い決意をして西の森に向かったイルカは、だぶだぶの忍服の袖と裾を捲り、ズボンのベルトを締め、緩んでずり落ちてきた額宛をきっちり結び直した。 カカシには忍犬と土遁追牙の術がある。 高く樹上を飛びながら地面になるべく下りないように気をつけて西の森の入り口に着いた。
森に入ってさえしまえば、多分カカシでも追っては来れまい。
薬も恐らくは一晩で効き目が切れるだろう。
少し寒いが、一晩の我慢だ。
西の森は大木の森で、イルカは楽に太い枝を選んで樹上を渡ることができた。 なるべく奥へ、と飛んでいる裡に纏いつくような視線を感じて背筋がぞくりとする。
まさか、もう見つかった?
いや、そんなはずはない。
追い立てられるように枝から枝へ飛びながら、イルカは辺りの気配を探った。
誰もいない、よな?
?
こころなしか動物の気配も薄い気がする。
何かおかしい?
イルカは段々焦ってきて、頭がぐるぐるしてきてしまった。 どこをどう通ったのか判らなくなる。 このままでは戻れなくなる、まずい、と思ったが、足元も覚束ず、ついに一枝踏み外し、森の底へと転落する。
「あっ あーーっ」
何とか枝を掴もうと伸ばした手を何かに掴まれる。 落下速度が何故か弱まり、ふんわりと地面に降り立ったと思った時、そこが森ではなく、見慣れたカカシの家のカカシの寝室のベッドの上だと気がついた。
「おかえり、イルカ先生」
カカシの腕の中にぽすんっと収まり、イルカは硬直した。
目の前には満面の笑みを浮かべたカカシの顔がある。
その笑顔が怖い。
こういう顔をしているカカシは、絶対酷く怒っている。
そしてカカシは、イルカが何か言う前に、イルカの口をねっとりと塞いだ。
どこからかも判らないまま、イルカはカカシの幻術の中で走っていたと知らされた。
***
だぶだぶの服は、あっという間に剥ぎ取られ、カカシの手が素肌のイルカの胸を揉む。 直接握るように揉まれると、イルカは直ぐに息が上がって熱く喘いだ。
胸ってこんなに感じるんだ。
乳首だけでなく、乳房や乳輪も、カカシの巧みな愛撫で快感を引き出されていく。
イルカは、自分の前に何人もカカシに女が居たのを知ってはいたが、カカシの女の抱き方を身をもって知ることになろうとは思わなかった。 諦めたとは言え、女体変化した体でカカシに抱かれることが哀しくて仕方が無い。 もしこの体の方にカカシがより満足してしまったら、男の身で同じ男に抱かれることを受け入れた時に捨ててきた多くの物の行き場が無くなってしまう。 涙が絶え間なく零れては頬を伝っていくが、カカシは見て見ぬ振りを決め込むつもりのようだった。 カカシがどんな風に女を抱くかなど、知りたくなかった。
心なしか、いつもより乱暴に扱われているような気がした。 女相手なのだから、もっと優しくしたほうがいいのじゃないかな、と余計な心配をする。 カカシに他の女を抱いて欲しい訳では決してない。 だけれども、この抱き方はどうかと思う。 愛撫の手は強く、荒く、手首や足首を掴んでは乱暴に体を引っ繰り返され、開かれ、鬱血を残す唇も痛いほどに強くイルカの肌を吸った。
---興奮しているからなのだろうか?
カカシが乱暴なのは、きっと女の体にいつもより激しく欲情しているからなのだ、と思い至ってイルカはまた涙が新しく湧き上がるのを止められなかった。
「いっ う、ん」
痛い、と言いたくなくて唇を噛む。
カカシが口に含んでいた乳首から伸び上がってきて、眦の涙を吸った。 両手は休み無く両方の胸の隆起を揉みしだいている。 その手付きも荒く、胸の芯のあたりがチクリと時々痛んだ。
「なんで泣くの? どこか痛い?」
痛いけど、と思いながら頭を振る。 泣いているのはその所為じゃない。
「そんなにこの体で抱かれるのが嫌?」
目を見開くと、面白そうに笑われる。
判っていて言っている。
判っていて止めてくれない。
イルカは絶望的になりながら、涙をなんとか堪えようと口を結んだ。
「嫌でも抱くよ。 こんなあんた、この先もう見れないだろうしね。 たっぷり楽しませて貰います。」
わしっと胸を揉む手を両方から中心へ掻き集めるようにされ、すっかり立ち上がっている乳首に代わる代わる唇を寄せて吸われる。
「う、んん」
堪えても漏れる喘ぎ声を噛み締めていると、片方の手がイルカの口元に上がってきて口の中にぐいっと差し込まれた。
「うぐっ あ、ん、いや」
「ね、胸、感じるでしょ? 素直に喘ぎなよ。」
カカシの指に舌を弄ばれ、唾液が口端を伝って零れてしまう。 一緒に零れて止まらなくなった嬌声も、甲高く部屋に響き渡る。
「ねぇイルカ先生、知ってる?」
やっと喘ぎ出したイルカの声に満足そうにしてカカシは問うてきた。
「女の体ってね、男とは比べ物にならないくらい感じるらしいですよ。 そうできてるんですね。 子孫を残すためにより受胎しやすく体のコンディションを持ってくように、より優良な遺伝子を持った男を誘うように、男の手によって全身で感じるようにできてる。」
すごいですよね、と感心したようにカカシは言った。
そんなこと、自分だってカカシの手なら全身で感じしまう。
聞いていたくなくて顔を両手で覆うと、その手首を掴んで左右に開きながら、カカシは間近にイルカの顔を覗きこんだ。
「楽しみだなぁ。 あなたがどんな風に乱れるか」
ひくっと顔を引き攣らせてカカシのいやらしく笑う顔を見つめる。
言葉なんか出なかった。
カカシはそんなイルカの唇にちゅっと接吻けると、徐にイルカの下半身に身を沈めた。
「あっ や、いやです、カカシさんっ」
あっと言う間に足首を掴まれ、大きく開かされて腿を抱えられる。 カカシは躊躇無くイルカの股間に顔を埋めた。 舌先がすうっと割れ目にそって舐め上げていく。 それを何度も繰り返されて、ついには舌を襞の内側に捩じ込まれた。 カカシの舌は迷わず割れ目の一番上あたりの痼をぺろぺろと舐め出した。
「ああ、い、いや、ああっ」
体がどうしようもなくびくびくと跳ねる。 そして、舐められている部分を中心に、じわじわと熱い波が広がっていくのが判った。 カカシは舌の動きを激しくしながら、更に舐めている部分の直ぐ上あたりを指で捏ね回した。
「あっ あっ ああっ」
達かされる。
舌で達かされる!
イルカは必死で手元のシーツを握り締め、快感の波に攫われまいと抗ったが、頂上はあっけなく訪れた。
「あっ ああーーっ あ、う、うん」
体ががくがく揺れて止まらない。 男のように何かを吐き出して終わる訳ではなく、痺れるような激しい快感がいつまでも体を貫き続けた。 カカシが意地悪く達したクリトリスを刺激してくる。
「い、あ、やぁ」
上半身までがくがく痙攣させてイルカは泣いた。 やっと収まるかと思われたクリトリスの快感が、カカシに舐められている裡にまた戻ってきたのだ。
また登り詰める。
あ、いく…
「ぁあ、ん」
最初に比べれば弱かったが、追い討ちを掛けるように襲ってくる波状の快感は、イルカの正気を飛ばせて翻弄するのには充分だった。
「ん… ん…」
緩く頭を振って悶えるイルカに、股間からやっと顔をあげたカカシが圧し掛かりキスをする。
「どう? イルカ先生の味」
「んう、んーっ」
気がついて、その趣味の悪さに頭を振るが、カカシは舌を差し込んでイルカの舌を絡めとり、さんざん楽しんでからやっと口を離した。
「ほら、もうこんなに濡れて、蜜が溢れてる」
カカシの指がいきなり何本か差し込まれて抜き差しされているのだが、痛みは全く無く、いったい何本入れられているのかも判らなかった。
これが、女の体…
イルカは快楽に翻弄され、じんわりと滲んだ思考の中でぼんやりと思った。
勝手に濡れる体
長く続く快感
男を柔軟に迎え入れ、締め付け、離さずに快感を与えることができる
そうだ、これからカカシをここへ迎え入れる…
指に刺激されている箇所が熱い。
早くもっと太く硬いモノが欲しいと思った。
はは
俺ってやっぱり淫乱だ
恐らくこの体は処女だ。
なのに、男が欲しくて堪らないなんて…!
堪らなくなってまた涙を零すと、カカシが動きを止めてじっとイルカを見下ろす気配が伝わってきた。
「ここで止めましょうか?」
「…え?」
「だって、あんたそんなに泣いて、俺だって何も無理矢理ヤリたい訳じゃないですよ?」
そんなに嫌ならここで止めましょう、とカカシは体を離しかけた。
「カ…カカシさんっ」
イルカは嗚咽混じりにカカシを呼んだ。
この人は、またそんな殊勝そうな事を言って、俺に欲しいと言わせたいのか!
「最後までしないなら、最初からしないでくださいって、言ったはずですっ」
イルカは顔を覆って唯泣いた。
「ひ、ひどいです、カカシさんは…、う、うふっ」
しゃくりあげてカカシを詰り、イルカが体を捻ってうつ伏せようとすると、熱い手が肩を掴む。
「欲しいよ、俺だってあんたが欲しいっ めちゃくちゃ欲しいよっ でもあんたがそんなに泣くから…」
そんなに嫌なのかと思ってさ、と不貞腐れたような声が落ちてくる。
イルカはそっと手を外してカカシを見た。
カカシは居心地が悪そうにガシガシと後ろ手で頭を掻いていた。
「あんたが女体のままで抱かれたくないの、判りますよ? だから俺も無理はしたくないって思ったんです。」
イルカは、カカシが自分の心情を正しく理解してくれている事に驚き、それでも抱こうとした事へ少し呆れた。
「でもカカシさん、ここまでされて放られるのは、返って辛いですよ。 俺だって初めてだし怖いけど、もう最後までしてもらわないと俺…」
「最後まで、していいの?」
イルカはむぅっとしたが仕方なく頷いた。
カカシの顔が笑っている。
悔しい、また乗せられた。
「ねぇ、きっと痛いよ? あんた処女でしょ?」
いいの? と更に聞いてくるカカシに吃驚する。
そこまで判っていたのか。
悔しくて、イルカはくっと口を引き結ぶと、憮然として言い放った。
「じゃあ、誰かに処女あげてきますから、そしたら抱いて、わっ」
途端に怒りのオーラを放ってカカシがイルカを押さえつけてきた。
「あんたっ、ばかも休み休み言いなさいよ」
カカシの目が怒りにメラメラ燃えている。
イルカはふぅと溜息を吐いた。
「バカはあなたですよ。 もう早く抱いてください。 欲しいです。」
結局、自分が素直になるしかないのだな、とイルカは諦めてカカシの肩に腕を回した。
・・・
「あ、あ、い、いた… あうっ うん」
カカシは宥めるようにイルカの髪を梳き、頬を撫でながらも、容赦なく体を進めてきた。
何かがプツリと裂け、一旦広がり、また裂ける。 その繰り返される痛みがイルカを襲った。 暴れようにも、カカシがぴったり覆うように覆い被さっており、頭まで抱え込まれて抱き締められているので身動ぎさえ儘ならなかった。
”破瓜の痛み”
という言葉が頭の隅で思い出され、女子にする性教育の授業内容を知らず反芻している教師な自分におかしくなったが、現実は笑うどころではなかった。
「痛い?」
はっはっと短く息を吐き、時折呻くイルカの細い腰に自分の全てを埋め込んでから、カカシは問うた。
声は出ず、こくこくと微かに顎を引いて答えるイルカの顔は若干青褪めていた。
腰を進めていた時感じた、細いリングに自身の先端を何度も差し入れては破る感覚は覚えがある。 本当に処女なんだなぁ、というどこか気恥ずかしい思いに囚われ、自分でも驚いた。 女は星の数ほど抱いたが、素人のお初ほど面倒くさいものはないと思っていた。 若い頃は手当たり次第の感もあり、もちろんお初も頂いた経験があるが、多少練れてくると、好んで相手に選んだのは玄人の女か遊ぶことを知っているくノ一の女だけだった。 そんな自分が、男でしかも如何にも初心そうなイルカを選んだ時、嘗ての女達は一様に眉を顰めたものだ。
”カカシ、どうしちゃったの?”
仕方ないじゃないか、惚れちゃったんだから。 俺が一番驚いてるさ。 しかも、この恋人は全然自覚がなくて、目を離すと直ぐどこかへふらふらと飛んでいってしまう。 直ぐこの手の中から逃げていってしまう。
---今日だって!
とカカシは思いだしてまた腹を立てた。
今日だってさっさと逃げやがって。
俺がどれだけヤキモキしたと思ってんだ、この人は。
捕まえてみれば消え入りそうに儚げでかわいくて、もし他の男に捕まってたらどうなってたと思ってんだ、まったく。
しかも、あんな危ない森に逃げ込もうとするなんて!
今日と言う今日は、男は怖いんだぞ、という事をこの心底鈍いお人好しの天然に教え込まねばなるまいよ。
イルカを見ると、カカシが暫らく動かずにいた所為か、呼吸も大分落ち着いてきており、覚束なくも涙で光る真っ黒い双眸を頼りなげにカカシの目に併せてきて窺うように瞬きを繰り返した。
「動くよ?」
汗でしっとり濡れるイルカの何時もより小さなその顔に幾度か接吻け、最後に唇を啄ばみながら問うと、イルカは物憂げにひとつ頷いた。
さっき、初めてなのにクリトリスへの刺激だけでこの人は達った。
やっぱりこの体は感じやすい。
多少無理をしても多分大丈夫だ。
膣で感じて達くこともできるだろう。
カカシがそう考えた時、余計に細くなった腕が首に回され、きゅっとしがみついてきた。 それを合図に、カカシはゆさりと一度大きく引いて、イルカの両足を抱え上げた。
痛い、痛い、いたい…
アナルが裂けるのとは違う、内部が引き裂かれる痛みにイルカは戦慄いた。 頭が痛覚を麻痺させるために脳内麻薬を大量に生産しているのか、意識は既に朦朧としてきていた。 力が抜けてずり落ちそうになる腕に必死に力をいれて、カカシの首に縋りつく。 カカシは先程から一回も達していない。 今落ちたらだめだ。 がんばらなきゃ。 汗を滴らせて律動を刻むカカシの顔に頬を摺り寄せ、突き上げられる体の揺れをカカシに同調させようと腰を少し浮かせた時、カカシの先端が奥をぐりっと突いて何かに触れた。
「あっ」
一瞬仰け反って目を見開くと、カカシが続けさまにそこを狙って突き出した。
「あっ やっ ああっ」
違う、気持ちいいんじゃない、ただ体が勝手に跳ねるだけ。
男の前立腺への刺激とも違うその感覚に翻弄され、イルカは叫び続けて首を打ち振った。
「いやぁっ ちがっ あ、ぁんっ んー」
「違わないよ、ここは子宮口だ。 感じるんだよ、女はここで」
教え諭す口調のカカシの顔を見て、イルカは急に切なくなった。
経験の浅い自分と違い、女の体を知り抜いているカカシを知る。
揺さぶられ、膣を擦られ、奥の体がどうしようもなく跳ねる場所を抉られる。
女としてカカシに愛されている。
カカシは女を抱いている。
例えそれが自分自身であっても、心の男の部分が悲鳴を上げた。
もう嫌だ。
逃げ出したい。
熱い雫が目に湧き上がっては耳元に滑り落ちていく。
「辛い? イルカ」
その時、気遣うようなカカシの声がして、やっと自分の顔を心配気に覗きこむカカシの顔に気付いた。
さっきも、ここで止めようかって言われちゃったんだっけ。
イルカは首をひとつ振ると、自分からカカシに接吻けた。
カカシが応えて一頻り深く接吻けを交わす。
ああ、カカシが好きだ。
「カカシさん」
「ん」
「好きです」
「…ん」
カカシの抱き締める腕に力が篭った。
痛みがどうしてか遠退きだした。
「あ… ぁ、ああ… ん」
声に艶が混じり出した。
やっと好くなってきたか、とほっと息を吐く。
堪える顔をして泣くイルカが切なかった。
やはり無理をさせているだけかと哀しくなった。
女の体のイルカと何回も睦める訳ではないから、今日一回でイルカを絶頂に導こうとしたのだが、やはり無理だったかと諦めかけていたところだった。 女の体は面倒だ。 慣れないとセックスで快感を得る事ができない。 その代わり一旦慣れると、その感じ様は男の比ではないのだが、そうなるまでには回数と時間を費やさなければならないのが普通だ。
だが、好きです、と呟いてイルカは艶やかに喘ぎ出した。
よかった…
かわいい
喘ぐイルカが愛おしい。
カカシは快楽に震えだした体を隈なく愛し、鳴く場所を執拗に抉り、接吻けを贈っては抱き締めて、イルカが細く叫んで達した後に腰に集まる熱い想いをイルカに注ぎ込んだ。
***
気がつくと、見覚えの無い小さな女性の手が見えた。 その手がぴくっと動いて、ああこれ、俺の手だ、まだ戻ってないのだ、と知る。 体全体がだるく熱っぽかった。 気を失ってまだそれほど経っていないのかもしれない。 ともすれば閉じてしまいそうな重い瞼を二三度瞬かせ、見慣れぬ自分の手をにぎにぎしていると、突然のその手に大きな男の手が重ねられ、低い囁き声が上から降ってきた。
「大丈夫?」
はっと覚醒して声の方を見上げると、カカシが片肘をついて頬を支え、顔を覗きこんでいた。
どのくらい見られていたのだろう。
急に恥ずかしくなって、熱くなる頬を意識していると、カカシがふっと微笑んで、頬にかかる髪を掬い上げてきた。
「どこか痛いとこない? 平気?」
「…だいじょうぶ」
自分の声はまだ高い。
よく覚えていないが、カカシも達ったようだった。
カカシはこの体を堪能しただろうか。
もう元に戻ってもいいだろうか。
それともずっと女でいた方がいいだろうか。
「女の、俺のほうが、よかった?」
思わずぽんっと出てしまったその問いに、自分の方が驚く。
目を見開くカカシの顔を見て、しまったな、と内心焦ったが、もう取り返しはつかなかった。
「何言ってんですか。 俺がどれだけ心配したと思ってるの?」
カカシは急に言葉を荒らげて捲くし立て始めた。
「あなたがそのまま飛び出したって聞いて、俺がどれだけ…。 ったく、あんたの足はどんどん森の方へ向かうし、捕まえてみれば、こんなに小っちゃくなっちゃって力も無くなっっちゃってるし、パニック起こしてるし。 それが言うに事欠いて、女の自分の方が好かったかですって? それどういうつもりで言ってるの? ねぇ、状況わかってる?」
イルカはぽかっと激昂するカカシを唯見上げていた。
「あの森はね、今人間を犯して喰らう魔獣が出没してて厳戒態勢敷かれてんですよ。 アカデミーにも通達行ったはすですよ?」
「あっ」
そう言えば、この前子供達に注意をしたばかりだ。
「ほら、あんた自分がどれだけパニクッてたか判りました? ま、あんたみたいにボケボケ入り込む人間を強制排除する幻術結界が張ってあったから良かったけど、もし魔獣に会ってたら、あんた確実に犯られてましたよ。」
カカシがぽんぽんと物を言うので、イルカも少しムッときた。
「そんなことありません。 俺だって一応忍なんですから」
「やっぱり全然判ってないね。 あんた今ちゃんとチャクラコントロールできる?」
「え?」
イルカは吃驚して自分の手を見た。 自分の中にチャクラがあるのは判る。 だが、いつもなら簡単にその流れを掴めるのに今は自分の手先にさえ集めることができなかった。
「わかりましたか。」
カカシは呆れたように言い募った。
「体もそんなチンチクリンになっちゃってるし、力だって全然出ないでしょう? そんなんで外に飛び出すなんて状況把握も何も全然なってなかった証拠ですよ。」
「ご…めんなさい」
イルカは小さくなってカカシに詫びた。
「だいたい、なんで直ぐに俺に頼らなかったの? 俺が怒ってるのはそこですよ。」
「だって…」
「だって何です。 あんた、俺から逃げたんでしょ? 頼るどころか逃げたんですよね?」
「…はい」
「俺が女体になったあんたを犯るとでも思った?」
「だって、現にこうやって」
「もちろん、犯りますよ。」
余りの言い様にイルカが頬を膨らませると、カカシは更に畳み掛けてきた。
「でもまずあんたの体を調べて、危険がないか元に戻れるか、確かめるのが先でしょ? 俺がそこまで常識ない奴だと、あんた思ってる訳?」
実は思っていた。
困ってただ汗を掻いていると、カカシはムゥっとしてイルカを睨みつけた。
「その顔は図星なんですね。 イルカ先生酷いっ 俺のこと全然信用してないっ」
「ご、ごめんなさい、カカシさん。 逃げた事は謝りますから、ご迷惑お掛けしたことも、このとおりです、ごめんなさい。 でも俺、一晩くらいで自然に元に戻ると思って」
「その一晩の裡に、あんたが魔獣に犯されて喰われてたらどうすんの? 俺はどうしたらいいの?」
「カカシさん…」
イルカは泣きそうなカカシの声と表情に困惑を隠せなかった。
「俺がどれだけあんたを心配したか、判ってくれた? 死ぬほど心配したんだよ?」
「はい、ごめんなさい。 許してください。」
「許しませんよ! 俺に約束してください。 これからは何があっても絶対俺を頼る、いい?」
「はい」
「今までみたいに、何でも一人で何とかしようなんて思わないで、困ったら俺に相談するの、できますか?」
「はい」
「俺が側にいなかったら、そん時はどうすんの?」
「えと、カカシさんを探します。」
「そう。 それもできない状況だったら? どうする?」
「え? えーと、その時は仕方ないから自分で何とか…」
「違うでしょ!」
「は、はいっ」
すかさず突っ込まれてイルカは竦んだ。
「まず、そんな状況にならないように気を付けるの。 それでもダメなら早い段階で俺に助けを呼びなさい。 式鳥でも何でも飛ばすんです。 できるでしょ?」
「はい…」
諭すように言うカカシに、正直なんだか情けなくなってきて、項垂れて返事も小さくなってしまう。
するとカカシは呆れたように溜息を吐いた。
「あんたねぇ、判ってないから言うけど、あんたは迂闊過ぎます。 もっと自覚を持って、周囲に気を配ってください。 変な状況に落ち込まないでくださいよ。」
頼みますから、とカカシは心底疲れた様子でイルカの体に凭れかかってきた。
「俺は心配で堪らない。 あんたが傷ついたり、取り返しのつかない事になりはしないかって、ねぇイルカ先生、あんたこのまま女になって、忍も辞めて俺だけの物になってくれませんか?」
イルカはカカシの髪をゆっくりと梳きながら、何時になく真情を吐露するカカシの切々と訴える様に少し驚いていた。 いつもHな事ばかり言ったり遣ったりしているカカシが、その実こんな事を考えていたのかと不思議だった。 イルカは、カカシにここまで言われても、どうしてカカシがそこまで自分に入れ込むのか判らなかった。 そんな迷路に迷い込んだ時、イルカがいつも行き着く答えは、「カカシは何か勘違いをしている」だった。 そして、「勘違いはいつかは解ける」というのがイルカの持論だった。
カカシは、イルカに対してだけは何時も臆病になってしまう自分のなけなしの勇気を込めた懇願に答えずに、ぼんやりと髪を梳くイルカの顔を見上げて溜息を吐いた。
「イルカ先生、またへんなこと考えてるでしょう?」
イルカはぴくっと体を震わせると、今気付いたようにカカシの顔を見た。
「いえ、別になにも…。 それに俺、忍も男も辞められそうにありませんけど、今のままでも俺はカカシさんのものです。」
案外しっかりとした口調で言い切るイルカが、返って哀しいのだと、イルカは知らない。
もっと俺を頼って
俺に縋り付いて泣いてほしい
そう言えたなら…
臆病な自分に笑える。
そんなことを言われるのが、イルカが一番嫌うことを知っている。
イルカは誰も頼らない。
失って困る物を作りたがらない。
自分はあなたのものだと言いながら、いつでも俺の手を離す気満々だ。
この人が俺の手を離す時は、世の中全てから手を引く時。
カカシにはそれが重々判っていたので、恐ろしくてイルカに言えないのだ。
あなたの人生を俺にください、と。
言った途端、イルカが手を離して、さようなら、と言われてしまいそうで、怖くて…。
「…ったく、さっきの俺のなけなしの勇気を返してほしいよ…」
「はぁ?」
なんです、それ、とイルカはおかしそうに笑ってカカシの髪をまた梳き始めた。
・・・
「ねぇ、まだ戻りそうもない?」
カカシが腹の括れを揉みながらどこか不服そうに尋ねてくる。
「さぁ、俺にもわかりませんし、まだ宵の口ですから、明け方くらいには戻りますかねぇ」
イルカはどこかのんびりとした口調で答えながら、相変わらずカカシの髪を梳いていた。
カカシの髪は猫っ毛で、柔らかくふわふわとして梳き心地がよかった。
「うーん、もうしょうがないなぁ、このままでいっか」
カカシはくるっと起き上がると、またいそいそとイルカの体を弄り出した。
「え、え? またですか?」
「そうです、もう一回です。」
「でも、俺処女だったんですよ? もうちょっと労わってくれたって」
「あんなに感じれるんなら大丈夫です。」
胸をまた乱暴に揉まれ、直ぐに秘部に指を差し込んでくるカカシに堪らず息を乱しながら、イルカは訴えた。
「カカシさんっ あなたちょっと女性の抱き方、乱暴過ぎませんか?」
「そう? こんなもんでしょ」
「あ、んん… あの、やっぱり、女の体のほうが、その…」
口篭るイルカに訝しそうにカカシは動きを止めた。
「なに?」
「あの…、女の体の方がやっぱり、燃えるのかな、と…」
それで乱暴になるのかな、と思ってとイルカが言うと、カカシはぷっと吹き出した。
「イルカ先生、初心だなぁ。 イルカ先生、俺にいつも大事に抱かれてるからそんなこと思うんですね。 女なんてね、少し乱暴なくらいの方が好きなんですよ? それにね、俺、中身がおんなじイルカ先生でも、体はやっぱ男のイルカ先生の方が燃える。」
「そ、そうなんですか?」
俺ってあれで大事に抱かれてたんだぁ、とか、女って乱暴なくらいが好きなんだぁ、とか余計な方に気が削がれつつ、男の体の方が燃える、と言われた事がじんわり脳に染みてきて赤面する。
「うん、もう全然。 だってアレが無いし」
と言ってカカシは指で筒を作り握って扱く仕草をして見せた。
「イルカ先生のアレ、すんごく握り心地、いいんですよねぇ、俺しゃぶるのも大好き。」
「そ、な…、でも、だって、女の体の方が柔らかくて気持ちいいじゃないですか?」
余りに恥ずかしいことを言われて、イルカが赤くなって混ぜっ返すと、カカシは尚も恥ずかしい事を並べたててイルカを慌てさせた。
「何言ってんの、イルカ先生の引き締まった腹筋とか太腿とか揉むのすごい気持ちいよ。 尻の肉なんかいつまでも触ってたくなるもん。 胸だってイルカ先生のだと思うからこういうふくよかな胸も楽しいけどね」
とモミモミと両手でいやらしく胸を揉みながらカカシはイルカの顔を覗きこんだ。
「いつものイルカ先生の小さい乳首がさ、俺の手でぷくっと尖ってきて、それを舐めたり捏ねたりしたときのイルカ先生のやらしい顔ったら…」
そこまで言ってカカシは徐にぶるっと体を震わせた。
「やべぇ、催してきちゃった」
カカシは片手を胸から離してイルカの秘部に再び指を差し込み、くちくちと掻き回しだした。
「あ、や、あ…」
「俺ね、あんたのアナル解すのも大好き」
「え、あん… でも、で… あ、面倒じゃ…、ん」
「全然、面倒なんかじゃないよ。 あんたのアナルに指を突っ込んだり舌を這わせたりして、段々柔らかくなってくるあんたの体みたいにアナルが解れてくると、俺すげぇ興奮する。 あんたの喘ぎ声とか跳ねる体とか大好き。 ねぇ、あんたのアナルはね、俺の指を三本も飲み込んでぱくぱく喘いで俺を誘うんだよ。 ううっ たまんねぇ」
性急に腿を開かされ、カカシの熱い欲望が体を貫いた。
女の体は楽だなぁ
イルカは貫かれても何時もの激しい衝撃がなく、そこが男を受け入れるようにできている事をまざまざと感じた。
「あ、あなたは、元々男の方が好きな人、だったんですか」
「ううん、イルカ先生が初めて」
イルカが喘ぎ喘ぎ尋ねると、カカシは簡単に否定した。
「だってめんどくさいじゃん、抱くだけなら女がいいよ」
イルカが全然判らない、という顔をしてみせると、カカシは笑った。
「だから、イルカ先生が特別なんだって、いつも言ってるじゃない。 ああ、早く戻らないかな、この体」
カカシは乱暴に突き上げながら、うっとり思い出すように言い募った。
そこでイルカは重大なことにやっと気付いて血の気を引かせた。
「あの、も、もしかして、俺が戻ったら、男の体でまた犯る気ですか?」
「もっちろ〜ん」
「………!」
「やっぱ、〆はいつものイルカ先生じゃないとね〜」
「○◇×▲※■☆◎□●▽!!!」
夜の四十万にイルカの言葉にならない叫びが響き渡ったとか渡らなかったとか。
「因みに、俺の居ない所でナルトの女体変化の術使うことは禁止です。 使ったらお仕置きですから」
と釘を刺すのもカカシは忘れなかった。
BACK / NEXT