PEACE MAKER
-Colt, Single Action Army, Peacemaker-
4
はっきりと思い出していた。 あの話を終らせる黄色い蛇は、王子さまから狐の話を聞いた後に現れた。 井戸を見つけた次の日の夜だ。 飛行士が修理から帰ってみると、王子さまは石垣の上で足をぶらぶらさせながら黄色い蛇と話していた。 飛行士は銃を取り出して撃とうとしたが、その時は蛇に逃げられた。 その夜、飛行士は王子さまの側を離れないようにしていたのに、彼は行ってしまったのだ。 だから、だから自分は、もし黄色い蛇を見つけたら迷わず撃とうと思った。 そして絶対眠らずに、彼の側から離れないでいようと思った。
・・・
「あっ ああっ」
自分の下で喘ぎ乱れる彼を突き上げながら、その顔をずっと見つめ続けていた。 彼の左手が彷徨うように突き出され自分の右肩を掴んで押してきたので、その手首を掴んで頭上の草の上に押さえつける。 そしてそのまま彼の顔に屈みこむようにして接吻け、更に腰を波打たせた。 彼は喉を晒して仰け反った。 白い喉が苦しげに喘いでいた。
・・・
子狐が去った後、食料についての説明を求めても、彼はしらばっくれるばかりだった。 だから、彼と二人で食べようと日中我慢して取っておいたポケットの飴玉を取り出して見せ、じゃあ今からこれを一人で食べると言うと彼は物凄く狼狽えて、どうかそれを二つとも自分にくれ、と言った。 無性に腹が立って彼に一つを放り、それに彼が飛びつく間にもう一つを自分の口に放り込む。 それを見止めた彼は、泣きそうな顔をして掴みかかってきた。
「ダメっ 吐いて! 出して!」
「嫌だ、これは俺んだ、もう食べちゃったもの」
「嘘です、まだ口の中にあるでしょう? お願いです、俺にください!」
「欲しけりゃ取ってみなよ」
意地悪くそう言って、まだ幾らも減っていない飴玉を舌の上に乗せてべぇと彼に見せ付けた。 すると彼は、いきなりグイと凄い力で胸座を掴み寄せると、無理矢理接吻けてきた。 いや、アレは接吻けなんてイイものじゃない。 ただこちらの口の中の物を自分の舌を差し込んで取ろうとしただけなのだ。 両手はこちらの首の後ろにガッチリ回され、押さえ込む事に使われていたから口を使っただけなのだ。 でも自分はそれだけで充分狼狽えた。 ゲイの男に接吻けられたと、慌てて口の中の物を吐き出すと、彼ごと地面に払い除けた。 この時は、焦るあまりに乱暴にそうしたが、彼のこの接吻けが自分の中の堰を切った事は確かだと思う。 現に自分は、この後どんどん嗜虐的になっていく自分を抑えられなかった。 そして、這いつくばって砂の中を両手で弄り目的の物を見つけると、その砂だらけの飴玉を砂ごと口に放り込みそのまま飲み下してしまった彼を目にした途端、その嗜虐心は激流にように流れ出した。
「な… なんてことすんだよ! そこまでして食べ物一人占めしたいのか? それともそうしなきゃいけない訳があるのか?! 説明してくれよ!」
口中の砂にゲホゲホと咽ながら、彼は暫らく砂の上に蹲ったままでいた。 だが、やにわに立ち上がって井戸に向かって走り出した。 水で口を漱ぐ気だ、そうはさせるかと追いかけて井戸の手前で追いつくと、その足にタックルを掛けて草の上に組み敷いた。 体術など幾らも鍛錬していない自分には、ニンジャだという彼に敵うはずがないと思ったが、体格的には若干こちらに分があった。 だから力任せに暴れる体を押さえつけ、体重をかけて圧し掛かると、彼は案外あっさりと観念した。 否、観念したのではない。 彼はまた、突然体調を崩して抵抗できなくなってしまったらしかった。
「ほら! その飴の所為なんじゃないの? また具合が悪くなったんでしょ?」
「ち、違いますっ 離してくださいっ」
それでも往生際悪く白状しようとしない彼はだが、どんどん顔色が悪くなっていき、終いにはグッタリとして呼吸も荒らげ出した。
「水を…水を、飲ませてくださ…ねがい…ます」
きっとまだ体調が回復しきっていなかったのだろう。 彼はあっという間に昨日より酷い状態になった。 だが、あの井戸の水を飲ませれば治ると判っていたので、彼を引き摺って井戸のすぐ側まで行くと釣瓶に水を汲んでそのまま彼の口元へ持って行き、溢れるのも構わずにぶっ掛けた。 彼は溺れる者のように口をぱくぱくさせて水をなんとか口に入れようと幾分体を起こした。 そして、砂塗れだった顔全体で水を受け、幾分かは口に入れて飲み込み、だが充分には飲めなかったか上半身をびしょ濡れにしたままゼイゼイと荒く息を繰り返した。 それを横目で見ながら自分も水を飲み、残りを頭から被ると、シャツを脱ぎ捨てて彼に覆い被さった。 そして彼の衣服も剥いでいったのだった。 彼を犯そうと思った。 彼を犯して、一晩中抱いて、朝が来るまで彼と繋がっていよう、そう思った。
・・・
「イルカ」
ぎゅっと固く目を瞑っていた彼は、自分の低い呼び声に一瞬ハッとしたように目を見開いた。 口が何か言いた気に何かの言葉を形作ったが、それは音にはならなかった。 彼は、その黒い眉をきゅっと寄せ、同じように黒い瞳を潤ませて切なそうにじっとこちらを見上げ、そして最後には何かを思い切ったようにくっと口元を引き結んだ。
「イルカ」
「ああっ」
そんな彼の表情の変化を一つ残らず観察しながら、またグイと腰を押し付ける。 自身を全て彼の中に収め抉るように彼の奥を突いては、その度に寄せられる眉や上がる顎に見入り、搾り出されるように漏れる声を聞いた。。 ぴったりと嵌ったように絡まりあう体と体を隙間無く密着させ、或いは離して足を掴み、だが彼の顔からは目を外さずに彼を揺する。 彼のイイ場所は直ぐに判った。 どうしてか、男を抱くことなど初めてのはずなのに、全く手順に迷いも無かった。 まるで抱き慣れた勝手知ったる体をいつものように抱いている、そんな感じだった。 そんな自分に内心たじろぐ気持ちがあったが、途中からはもう何も考えまいと余計な思考を振り払った。 彼の体は酷く具合がよく、今まで感じた事のない快感を与えてくれた。 それに溺れ、ただ貪った。
・・・
「い、いやだっ 止めっ やめろっ 離せっ」
何をされるか直ぐに悟った彼は、彼にその時でき得る限りの抵抗をしたのだろうが、やはり幾らも力は出せないようだった。 そんな彼に馬乗りになって力任せに衣服を引き千切ろうとしたのだが、どうやっても裂け目一つできなかった。 仕方なく胸まで捲り上げて白い体を弄った。 彼の肌は肌理細かく滑らかで、掌で撫で回すだけで興奮が全身に満ちていった。 彼は、ゼイゼイと苦しげに喘ぎながら、それでも必死にこちらの手を押さえようとしてきた。 その手を連れたまま目に入った両の乳首を指先で撫でる。 驚いたことにそれは既にコリッと硬くしこり、指の腹になんとも言えない感触を伝えてきた。 そしてそうされた時の彼の顔と、ヒクリと震えた体とが、脳にダイレクトにそこが”性感帯”である事を教えてくれた。
「ひっ や、あっ」
だからそこを指先で摘まみ、硬いしこりを揉み解すようにぐにぐにと捏ねると、彼は物凄く色っぽい声を上げながら体を跳ねさせた。
「ここ…感じるんだ?」
言葉責めをするつもりは無かったが、ポロリと言葉が出てしまった。 それに対し彼は、血が滲む程唇を噛む事で答えた。 もっと彼の声が聞きたくて、捏ねたり抓んだり押し潰したり、思いつくあらゆる刺激をそこに与えて彼の反応を凝視する。 抑えられない声を必死に掌で押さえ、それでも止められない跳ねる体が薄っすらと色付いていくのが堪らなかった。 脳は既にどこかが麻痺していた。 獲物を前にした肉食獣そのものに、頭の中は彼の体でいっぱいだった。 吸い寄せられるように彼の乳首に唇を押し当てた時も、男の小さな乳首にそんな事をすることがどんなに異常かという常識や倫理観が、どこかへ押し込められ蓋をされるのまで感じていたのに、自分はそれを唯傍観し、目の前の彼の小さく尖った乳首にペロリと舌を這わしていた。
「あっ」
その途端小さく声を漏らして、自分に胸を突き出すように彼がまた跳ねた。 上目でそっと彼の顔を見上げると、彼は顎を上げて喘いでいた。 感じている、彼が自分の愛撫に感じて喘いでいる。 そう判った瞬間、ドクリと大きく胸が鳴り、自分の中から迷いや戸惑いが奇麗さっぱり消えてなくなった。 そして行為にも遠慮や躊躇がなくなっていた。 乳首に噛み付くように吸い付くと、強く引っ張るようにしゃぶりながら先端を舌で嘗め転がす。 反対側は指で捏ね、もう一方の手は彼の脇腹や腰辺りを揉んでは撫で回した。 そしてソロリとズボンの上から彼自身に手を這わすと、彼が今までになく大きく抗い出したので、体重を掛けて押さえつけ、彼の両足の間に身を割り込ませる。 自分の腹に当たるそれが先程から息づいていたことは判っていたが、実際に手で触るとはっきりと形が判るほど硬く育っていて、どうしても直に触れてみたくて堪らなくなった。 他人の男のそこを触ったことなど勿論無いし、触りたいと思ったことも一度も無かった。 だが今は、彼のそこを触りたくて触りたくて堪らなかった。 触って、自分でもよく判る”気持ちがイイ”刺激を彼に与えて、彼がどんな風に乱れるのか見たかった。
「やめっ やめろっ うぁっ ああ…」
ズボンの隙間から手を差し込んで直接彼を握りこむと、自分の体の下でジタバタと暴れていた彼は竦むようにおとなしくなった。 既に濡れて滑りを纏っている彼自身を掌全体で感じ、よく知った硬くて柔らかい感触を確かめるように上下に扱く。 それはまるで、自分がそうされているように感じるほど興奮する行為だった。 そして、上から上がる彼の感に堪えたような上ずった声が更に自分を煽り、体中の毛細血管が充血したような気がした。
「あ、ああ… う、ううっ」
体調の悪さも相俟ってか、彼の抵抗も徐々に緩み、弱々しく悩ましげな喘ぎ声が続いた。 その声に煽られながら彼のズボンを引き摺り下ろし、躊躇無く彼自身へと顔を埋める自分が居て、それをまるで別の自分のようだと感じている自分も居た。
「や、あっ いや…だぁ…」
彼は足をバタつかせて暴れたが、太腿を浮くほど抱きかかえて彼を口に含んでしまうと、か細く叫んで両手で顔を覆い隠し、唯ゆらゆらと腰を揺するだけになった。 その仕草がとてもイヤらしく、夢中で彼を啜り上げた。 だが彼のモノは中々絶頂を極められずにいるようだった。 きっと体調が悪い所為だろうと決めて、それなのに彼の体を気遣う気持ちなどこれっぽっちも湧かず、頭の中は彼を犯すこと、それだけでいっぱいだった。 唾液でテラテラと濡れる彼のアナルを指で二三回撫でると、彼はヒクンと体を跳ねさせた。
「やめてっ いやっ あ…あうっ」
また暴れ出した体に構わず指を差し込むと、彼はぶるぶるっと震えてまたおとなしくなった。 そして「やめて、やめて」と繰り返しながら啜り泣き出した。 だが、ゆっくりと指を注挿させだすとすぐにその声に色が混じり出し、泣いているのか喘いでいるのか判らなくなった。 なんて淫乱な体なんだ、と何故か怒りが湧いた。 恋人が居ると言った。 その人の事が泣きたいくらい好きだと。 それなのに、他の男にちょっと体を弄られただけで感じて喘いでいる。 反応の鈍かった彼自身も、アナルを嬲り出すと硬度を増して張り詰めてきたし、体全体をピンク色に上気させ悶える姿は淫らの一言だった。 その頃には邪魔な衣服は全て剥ぎ取ってしまっていたので、もう辺りは暗かったが、どうしてか自分の目は月明かりだけの中で支障なく彼のしなやかな肢体を隅から隅まで見ることができた。 彼は引き締まった無駄の無い体付きをしていて、その肌には傷一つなかった。
「奇麗だ」
溜息と共に言葉を漏らすと、辱めるつもりではなかったのに、彼はピクンと反応してまた声を抑えてしまった。 すると、どこから湧いてくるのか後から後から嗜虐心が膨れ上がり、心を覆い尽くしていった。 彼を喘がせたかった。 グチグチと音を立ててアナルの指を3本に増やし、注挿に交えて中を掻き回すと、もう既にプルンと立ち上がった彼自身が涙を零し出したのでそれを空いた手で掴んで上下に扱いた。 すると、それまで口惜しげに唇を噛んでいた彼がついに「あっ」と声を上げ、また盛大に喘ぎ出した。
「あっ ああっ うっ うんっ」
なんて艶かしいんだろう。 女なんか目じゃない。 彼を嬲り喘がせることに夢中になっている自分を、また別の自分が冷たく見下ろして言った。 「オマエもゲイだったんじゃないか」と。 そうさ、もうゲイでもなんでもいい。 俺はこの人を抱く。 俺自身をこの人の中へ突き込んで、突き上げて、掻き回して、そうすることでこの人をもっと淫らに喘がせたい。 そしてこの人に中へ注ぎたい。 そして一晩中離さずに、ずっと一緒に…
「あ、ああーーーっ」
終に彼は白濁を飛ばして果てた。 自分の手の中で、未だビクビクと震える彼自身の先端からは、名残惜しげに汁が零れつづけている。 それを絞り出してやろうと根元から扱き上げると、彼は身を捩って悶えた。
「い、いやぁっ」
「アンタ、凄くヤラシイ… 抱くからね」
「だ、だめ」
達したばかりのところを嬲られて泣き濡れる彼が、また必死な様子でかぶりを振った。 その顔をじっと見つめ、ダメだ止めろという口を接吻けで塞ぎながら自分の前を寛げ、既に隆々と猛った自身を引き出した。 すると彼は気配でそれを知ったのか、やおら体を反転させ、四つに這って逃げ出そうとした。 だが、碌に動かせぬだろう体が幾らも進まぬうちに自分に捕まえられ、腰を高く引き上げられたその時、彼は終にその名を口にした。
「いやだっ カカシさんっ カカシさんっ!」
手元の草を必死で掴み、体を前へ逃がそうとしながら彼はその名前を2回呼んだ。 その途端、何かに胸を突き刺されるような衝撃が体を貫いていった。 彼は、突然動きを止めた自分を訝しく思ったのか首を捻ってこちらをチラと見遣ると、「止めてください」と懇願した。
「カカシさん…」
「!」
そしてまたその名前を呼んだので今度は酷くカッときて、彼のアナル目掛けて自身を勢いよく突き立てた。
「あうっ ううっ」
背を撓らせて彼は呻いた。 その背中に覆い被さり腹をぎゅっと抱き寄せると、ぐいぐいと最後まで自分を突き入れる。 彼の中は非常に狭く、そのきつさが痛いほどだったが、眩暈がするほど好かった。
「カカシって、アンタの恋人の名前?」
痛みにか、冷や汗を噴出させて震える彼の項に接吻けながらその顔を掴んでこちらに捻向けると、彼は絶望したような目をして涙を零していた。
「そうなんだ… でもね、いっくら呼んでもここには俺達ふたりきりだよ」
そう言い放つなり彼の腰を掴み直すと、ゆっくりと注挿を開始した。 彼はか細い声でもう一回だけ「カカシさん」と呼んだ。
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