淋しい兎は狼にその身を捧げ
- A Lonesome Rabbit sacrifices himself to the divine Wolf. -
29
子供。
イルカが自分との間に子を欲しがっている。
そう聞いた途端性衝動に結びついてしまうところが雄だと思った。 カカシは知らないまま、祠の前でイルカに血を流させてしまった。 イルカはイルカで、カカシは知っていてやっているものと思っていた。
・・・
普段、ベッドの中で暴れてはアラレもない事ばかり口走るイルカが、森の妖魔達の気配が濃厚に漂う中で自分に犯される事に非常に羞恥し、全身を朱に染めて恥じらい身悶える様に呆れながらも煽られた。
「あんた、いつもはあんなに恥知らずなくせに、妖魔相手だとそんなに恥ずかしいの?」
「だって!」
「見せつけてやる。 あんたは俺のモノだって」
「でも、でも体、辛いです。 も、すっごく、全然、ほんと無理ですから」
「大丈夫、あなたの薬持ってきたから」
ポケットからイルカが使ったというチューブ薬を取り出して見せると、イルカは言葉を詰まらせた。 空かさず股間を探ると、そこは既に反応を示しており、触れる肌への刺激にもいつもよりずっと敏感で、確かに感じ易い性質だとは思っていたがこれは普通ではないと感じさせられた。
---この人、本当に恥ずかしいんだ…
そう思った途端、頭に血が昇った。 同じ日の内に何度も愛しい者を痛めつける事への罪悪感と欲望との間で長く続けられた鬩ぎあいに終止符を打ち、カカシは欲望に身を任せた。 殊更執拗にイルカを嬲り高め、自身を挿入する前に何度もイルカを達かせて鳴かせた。 そうしてイルカが乱れる様を余す所無く晒せるように背面座位に持ち込むと、犯している場所がはっきり見えるように足を掴み上げて大きく開き、ゆっくりゆっくりと上下させる。 イルカの中心が如何に感じて震えているか、自分を受け入れている場所が如何に淫らな音を立てているか、見せ付けるように周囲に晒した。 イルカは泣いて嫌がった。 戻して戻してと体位を変えてくれるように請い、回りでカサリと気配が動く度に、顔から項から真っ赤に染めて恥らった。
そうやって恥らって
自分が誰の手で乱れるか、誰のモノで喘ぐか
自分が誰のモノなのか知ればいい
そしてよく見ろ
篝だか何だか知らないが
これは俺のモノだ
イルカには見えているのだろうか、妖魔の気配が動く度に嫌々と首を振り乱し、激しく中を締め付けながら乱れる。 その淫らさに一層煽られ、自分の中の”雄”を強烈に意識した。 自分のモノへの独占欲と征服欲、それを自分が思う様淫らに乱れさせる悦び。 ああ、何て獣じみているんだ。 自分こそが篝を欲して止まない妖魔のようだ、と思った。 自分には見えないが感じる、纏わり付くような視線と気配。 こんな密度の濃い妖魔の気配の中でセックスをしている異常さ。 普通なら命の危険を感じるところを、今は唯々対抗意識とでも言うのか燃え上がる独占欲の発露を、周囲への剣呑な威嚇と共に発散させて、カカシはイルカを嬲り続けた。
「ほら、あんたのがブルブル震えてる。 妖魔が今にも食いつきそうだ。 舐めさせてやる?」
間近まで迫る妖魔の気配を感じ意地悪く問うと、イルカははっきりと拒否を表し泣いた。
「やだぁっ 俺、カカシさんしか、カカシさんしか」
「…!」
だが、自分にしかそこは許さないと泣くイルカに脳が溶けた。 今にも弾けそうだったイルカ自身をガッと掴み根元を押さえると、もう片方の手で顎を掴んで後ろに捻じ向け噛み付くように唇を貪る。 節操なしで軽いイルカ。 果たして彼が自分と同じ重さで自分を愛してくれているのか自信が持てなかった。 誘われればどこへでも付いて行ってしまいそうだと、信じられなかった。 だが今、快楽に朦朧としながらも自分だけを選ぶと言って泣くイルカが目の前に居た。
「あうっ」
イルカの身体を前に下ろし、一頻り後ろから激しく突き荒らしてから、硬く猛ったままを乱暴に引き抜いた。 抱き合って達きたかった。 達かせたかった。 それまでの幼稚とも言える独占欲から発する欲望が、相手を愛しいと感じ愛し合いたいと願う気持ちに急速に移行していく。 だが、イルカを求める激情はそのままで、扱いを優しくしてやれるまでには至らなかった。 とにかく、他人に見せるセックスは終いだと、荒く胸を喘がせているイルカの肩を掴んで身体を引っ繰り返す。 足首を掴んで手加減も無しに大きく開きそのまま再び自分を突き立てると、精と汗で滑る腿を両手で掴んで撫で擦り、限界まで開かせて腰を回した。 イルカの中はグチュグチュと濡れた音を立てた。 頭上からは絶え間なく切なげな喘ぎが上がっている。 深く抉り、先端を奥の内壁に当てて擦る快感。 堪らず呻き声を漏らして迸りを注ぎ込んだ。 イルカの身体に覆い被さるようにドサリと重なり荒く息をすると、朦朧として今にも意識を飛ばしそうなイルカの顔に出会った。 その顎を掴んで唇に喰らい付き、イルカの意識を繋ぎとめる。 知らず「おまえは俺のモノだ」と繰り返していた。
己を引き抜くと、ゴボリと大量の白濁と共に赤いものが零れ落ち、イルカの腿を伝って流れていった。
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