淋しい兎は狼にその身を捧げ
- A Lonesome Rabbit sacrifices himself to the divine Wolf. -
17
「イルカ、俺を好き?」
「ぁ… すき…」
硬く抱き込んで奥を抉る。 奥の奥に、イルカが抵抗できなくなるポイントがあった。 そこを突くと最初は虎の子のように暴れて爪を立てたが、ある一瞬を過ぎるとふにゃふにゃになってしまった。 そうなるともう、何をしても何を言っても為すがまま言うがままで、ただカカシの腕の中で身を震わせて喘ぐばかりになった。
「愛してる?」
「ん、あいして、る、すき、あ、あい…し…る」
ぐったりと投げ出されている腕を掴んで自分の首に持っていく。
「ここに掴まって」
「んん、できな」
「できるよ、ぎゅってして」
「ううん」
力が入らないのか、首を振ってぐずるように嫌々をするイルカは可愛いが、ここは躾だ。 肩を掴み直して体を揺すりあげる。
「ひっ あ、あ、やぁ、ああーっ」
もうポイントは覚えた。 ひたりとそこに自身の先端を押し当て、グリグリと抉るように穿つとイルカは息も絶え絶えに喘ぎ身悶えた。
「手、掴まれる?」
「ん、ん」
動きを緩めて再度問うと、涙をぼろぼろ零してイルカはやっと腕を上げ、カカシの首にヒシとしがみついた。
「イルカ」
カカシもイルカの首を掬い上げるように腕を回し、隙間無くぎゅっと抱き締める。 イルカが無意識なのか、髪に指を絡めて弄り涙で濡れた頬をカカシの頬に擦り付けてきた。 抱き締めあう行為がこれほど心地よいと言う事を、久しく忘れていた気がした。
「愛してる、イルカ」
まるで一つになったように抱き締め合ったまま、カカシは体を揺らした。 イルカと繋がった部分からはグシュグシュと濡れた音が響いてくる。 突く度に小さな声を上げて喘ぐイルカの体の震えが、しがみつかれた腕を通して先程よりはっきり伝わってきた。
「ぁ、ぁ、カカシ…、う、ん、カ…シ、好き」
あんなに嫌がったのに、何回も呼び捨てにカカシの名を呼び、好きと繰り返す。 正気に戻ったら覚えてないんだろうなぁ、とカカシはどこかこそばゆく感じた。 まさかこんな風に、手の内に落ちてくるとは思わなかったのだ。 それほどイルカはセックスに慣れず、飽く事無く抵抗した。
・・・
乳首を口に含むと頭を殴られ、体を弄ると手を引っ掻かれた。 だが腕力では全く勝負にならないイルカが、カカシに組み敷かれ、愛撫に震わせられ喘がされ、ぐったりして抵抗が緩んできた頃合を見計らってイルカ自身を口淫しようとした瞬間、イルカのその日最大の抵抗が襲ってきて、カカシはうっかり撃沈するところだった。
「イルカ先生っ!!」
見事に踵が入った顎から鎖骨の辺りを押さえてカカシは呻いた。 だが、蹴りを入れた当のイルカの方が青褪めて、後退ってベッドの端まで逃げ、ふるふると首を振って涙ぐんだ。
「ご、ごめんなさい、カカシ先生、でも俺、あ、あんなこと…」
「あんなこと?」
「あなたに、俺の、な、なんか、絶対…」
「絶対やるっ」
優しく口で達かせてやろうと思っていたが、こうなったら手でも何でも何回か達かせてしまおうと、逃げ暴れる体を捕まえうつ伏せにベッドに押さえつけると、前に手を回して容赦なく掴み扱いた。 泣いて暴れていたのも最初の裡だけで、さすがに2回目、3回目になると手足の力も抜けてきたのか、ただ啜り泣くばかりとなった。 まるで強姦しているようだ。 これはこれで燃えるが、とまだ痛む顎を擦ってイルカの体を引っ繰り返す。 そしてイルカが気がつく前に、両足をがっちり抱え込むと腰を宙に浮かせて動きを封じた。
「や、やめっ やだ、やだぁーっ」
イルカに見えるようにベロリと先端から舐めてやった。 めちゃくちゃにもがく足や腰は、カカシがイルカ自身をすっぽり口に収めてしまうまで続いたが、カカシが顔を上下させてイルカを啜ると、ふるふるっと腿の内側を震わせたのを最後におとなしくなった。 だが、両手で顔を覆い歯を喰いしばる様は見ていて呆れるほど色気が無かった。
「イルカ、好きだよ、俺を感じて」
「う、うふっ んん」
イルカは顔を覆ったままだったが、ピクリと一度震えると、声を漏らし始めた。
「イルカ、イルカ…」
後はなし崩しだった。 泣き顔を見ながら何回も達かせた。 アナルと前を同時に探ると、身を捩ってまた抵抗したが、禄に力は入らないようだった。 解れてきたイルカのアナルに三本の指を出し入れさせながら、カカシはその締め付けに恍惚と自分を挿入した時のことを思った。
「ここに、俺が入る」
だがイルカは、カカシが思わず漏らしたその一言で、ぱったりと抵抗を止めた。
「早く突っ込んで、出してください。」
またそんなあられもない、哀しいことを言う。 何も知らないくせに。 男に愛されるということがどういうことか。 愛のあるセックスがどんなに人変えるか。 これから俺がおまえを愛し、おまえを変えてやる。 身も心もすっかり犯して、固い殻に閉じ篭った子供のままのおまえを引きずり出して、細胞一つから新しくしてやる。
カカシは無言で己をイルカに突き立てた。
抱かれ慣れた体は力の抜きどころを心得ており、イルカははっはっと浅く息をしてカカシを柔軟に迎え入れた。 もう抵抗はせず嫌だとも言わなかったが、手は硬くシーツを握ったままどこへも縋らなかった。 何度か揺すり上げて体を慣らし、内壁が滑ってきたところで中を探る。 入り口から前立腺を辿る道を擦りあげた時、イルカはまた声を上げた。
「そ、そこは、いやだ」
そこ?
「そこって、ここ?」
態と前立腺を何度も擦ると、イルカはヒクヒクと痙攣して頭を振った。
「やだ、そこ、やめて」
「ここが好い所だって知ってるの? 誰? 誰に教えられた?」
「あ、カ、カズキ、カズキが…」
カズキ、カズキと繰り返す口を思わず手で塞いでいた。 戸惑いも無く他の男の名を挙げるイルカ。 明け透けなのもここまでくると腹が立つ。
「ふーん、じゃあここは突かない。 他を探す。」
それからはイルカにとって地獄のような時間だったかもしれない。 カカシは一つ一つ確かめるようにイルカを突き、抉り、揺すっては「ここはどう?」と覚めた口調で問うた。
「も、もういやだ、さっさと揺すって出したらいいでしょう? 何故そんな、ああっ」
可愛くない口を利くイルカを尚も抉り、尖った胸を撫で擦り、イルカ自身にも手を掛けた。
「ああ、やだ、もう触るなっ やだぁ」
イルカが頭を振って泣くと余計に容赦なく扱いて、内壁をビクビク締め付けながら達する様を自分も呻きながら眺めた。 そして達ってすぐのイルカを根元から先へゆっくり搾り取るように扱いてやる。
「ぁあ、や、いやーーっ」
そんなことをされたことがなかったのか、目を見開いて震える様はなかなかクルものがあった。
「ねぇ、あんた俺を好きでしょ? 好きって言って」
「あ、は、ふっ ふぅ」
まだ震え続けるイルカに構わず、カカシはイルカに言葉を強請った。
「俺、知ってるんですよ。 あんたの声がずっと聞こえてた。 でも俺はあんたの口から直に聞きたい。 あんたの心を」
緩く揺すりながらイルカの頬に片手を宛がい、ねぇと猫撫で声で強請る。
「ねぇ、言ってよ。 俺を好きだって、愛してるって。 あんたずっと俺の耳にそう囁いてたじゃない。 その声で俺を虜にした責任取ってよ。」
だがイルカは頭を振ってカカシの手を振るい落とすと、また否定の言葉を吐いた。
「俺は、俺は誰も好きになんかならない。 そんなことも言ってない。 俺はもう、そんなこととっくに諦めてるんだ。 あなたは尊敬してるし、感謝もしてる。 でも、好きじゃないし愛してもいない。 あなたも俺なんか構ってないで、もっといい相手が腐るほど、ああっ あ、ああっ」
イルカの言葉の途中で一頻り激しく中を穿ち、イルカを黙らせるとまたカカシは動きを止めて頬を擦った。
「可愛くない言葉は聞かないよ。 ちゃんと言えるまで何度でも責めてあげる。 あんたは自分の口でちゃんと言わなきゃいけない。 そうしないと変われない。」
「あ、俺は、俺は、変わらなくて、いい、いいんだ、ああ」
イルカが左右に頭を打ち振ると、黒髪がパサパサとシーツを打っては広がる様が艶かしかった。 カカシはゆっくり大きく突き上げを再開した。 イルカの足を片方だけ肩に掛け、残した足はその腿を開いて横に押し付け限界まで開かせる。 イルカと深く繋がる感覚は、自分でも果てなくイルカに飲み込まれていくようで、知らず腰がブルリと震えた。
「変わるんだよ、俺に抱かれて、犯されて、愛されて、何もかも捨てて、ほらイルカ、言って」
上からイルカをじっと見下ろして、ゆっくり、ゆっくりと、最奥まで穿ち押し付けた腰を波打たせる。
「や、やだぁ」
「言って、愛してるって、俺を好きだって」
「や、あ…、あ、あ、ああ…あ…」
突然イルカが仰け反って一回強く体を痙攣させた。 これでもかと奥を抉った時だった。 突くのを止めると、イルカは空気が抜けたように弛緩し、はっはっと忙しく呼吸を繰り返した。
「うん、ここ、かな?」
「いやっ あ、いやだ、ああう…」
またヒクヒクと引き攣ってついにその場所はカカシの知る所となった。 カカシは暫しその奥の奥、誰にも届かないようなイルカの隠された弱点を、緩急をつけて突き荒らした。 空気が虚しく抜ける音が喉を鳴らし、声もなくイルカは叫び続けた。 背は何度も撓り、足先までピンと伸ばして太腿の内側をヒクヒクと震わせ痙攣する。 中のカカシも引き絞るように締め付けられた。 だがカカシはそれに何とか耐え、尚もイルカの弱点を抉った。
「はっ ぁはっ ふっ あっ」
イルカは、カクカクカクと何度か体全体を揺らして果てた。 意識も飛んでしまったようで、ぐったりと動かなくなった。 達ったイルカ自身がまだピクピクと震えて涙を零している。 カカシは容赦なくまたそれを掴んだ。
「ふぁぁっ あうっ ああ…」
強烈な刺激に意識を引き戻されたのか、ビクッと震えて目を見開いたものの、何も見ていないかのようにイルカは虚ろな瞳でゆらゆらと頭を揺らめかした。
「イルカ」
呼んでも反応しないイルカの頬を軽く叩き、また名を呼ぶ。
「イルカ、俺を見ろ」
「うん、カカシ、せんせぇ」
「カカシだ」
「…カカシ」
イルカは言われるまま鸚鵡返しに繰り返した。
「俺が好きか」
すかさず言わせたい言葉を問う。
「好き、好き、カカシ」
「いつから? いつから好き?」
「ずっと、ずっと前から、あ、好き」
「イルカ」
何も考えられないのか、問われた事に即答するイルカの体を強く掻き抱いて押し付けた腰をグラインドさせた。 その場所に先端が当たる度にイルカのアナル全体がまるで物を嚥下するように収縮する。
「ああ、やぁ、もうそこやだぁ、ああ」
あまりの快感に我慢できずまた奥を目掛けて注挿すると、イルカは力無くはあったが手を振り突っ張らせて暴れた。 ズルズルとシーツの上を滑りながらも足を踏ん張り、体を捩る。
「やだっ、そこ、つかな…でぇ、やだ、死んじゃう、し…じゃう、うう」
泣きじゃくって頭を振り、なんとかカカシの律動を止めさせようと暴れるイルカに接吻けて抱き締める。 撓る背に腕を通し、項を掴んで接吻けを深くすると、暫らくもがいていたものの、イルカはやっとおとなしくなって接吻けを受けた。
「イルカ」
落ち着いたところでまた問う。
「俺を好き?」
「カカ…せんせぇ」
イルカはしゃくりあげながら必死の様子で目を見開き、カカシを見上げてきた。
「カカシ」
「カカシ…」
「俺を好き?」
「…好き、です」
ぽろぽろと涙を零し、イルカは小さく頷いた。
「俺もだ、イルカ、愛してる」
「………愛してます、俺も」
小さく吐息を吐き出して、イルカはついに欲しかった言葉をその口で紡いだ。
「ふふ、やっと聞けた」
「え?」
嬉しくて、何度もちゅっちゅっと接吻けながら言うと、イルカは案の定怪訝そうな顔をした。
「あなたの声、本当に聞こえてたんですよ、俺」
「声…?」
「そう、こう耳元でね、あなた俺に囁くの、愛してるって」
「言ってませ…よ、俺、そんな、こと、一回も」
まだしゃくりあげるイルカの頬に片手を宛がい、涙を拭いながら耳の辺りまでを撫でると、イルカはどこか気持ちよさ気に瞼を閉じ、顔を傾けてカカシの掌に頬を擦り付けてきた。 かわいくて堪らない。
「そう、口ではね。 だから俺、どうしてもあなたの口から直接聞きたかったの」
言葉の合間合間にも唇を啄ばみ涙を吸った。 愛おしい。
「…訳、判りません」
「ふふ…、いいよ、わかんなくて。 もう聞けたし。 好きなのは本当でしょう?」
「ほんとです…けど、俺、言うつもりなかったです、一生」
ふっと視線を外して俯く顎を指で捕らえるて上向かせる。
「ん、あなたは言わないと思った。 だから尚更言わせたかった。 あなたは変わらなくちゃいけません。」
「変わる…、俺は…」
瞳を覗き込み、暗示をかける様に囁くと、イルカは放心したようにカカシの瞳を見つめてきた。 そうだ、硬い鎧を脱ぎ捨てて裸になった今、あなたは素肌で俺を感じて愛される事がどんな事なのかを知ればいい。
「変えてあげます、俺の手で。 だから、ね」
「え? あっ」
カカシはまた律動を再開した。 イルカに収めたままのモノはまだ力を失っていない。 緩く注挿を繰り返し、浅い所を掻きまわす。 イルカは眉を寄せて小さく喘ぎ、またシーツを掴んで皺を作った。
「腕はここ」
手を掴み、自分の首に持って行く。 片方づつそうすると、イルカは緩く首に腕を回した。
「もっとぎゅっと掴まって」
「でも」
「いいから、でないと知らないよ?」
カカシはぐいと腿を押し開くと、またあそこをぐっと穿った。
「あうっ や、やめて、くださ、そこ」
「だめ」
ぐっぐっと続けさまに強く突き、更にグラインドも加えた。
「あ、やだ、やだぁ」
イルカの手は首から落ち、カカシの肩を押して胸を叩いてきた。 嫌々と首を振り、体も出来る限り左右に捩る。 だがカカシは動きを緩めなかった。
「ほら、掴まって、イルカ」
「やだ、やめて、おねが、ああっ」
ついにイルカは掻き毟るように首にしがみついてきた。
「イルカ、イルカ」
カカシももう限界が近かった。 ずっと堪えてきた自分を解放すべく、イルカを抱き込み見つけたばかりのポイントを激しく突く。 イルカの内部はカカシ自身を嚥下するが如く奥へ奥へと引き込んではゾワリと舐めるように蠢いた。 堪らない快感だった。 もう達く、と思った時、イルカの声のトーンが変わった。
「あ、や…、ぁ、あん…、うん、ん…」
「イルカ?」
「ぁ… ぅ、ぅん… は…」
「イルカ…」
イルカは完全に正気を飛ばして喘いでいた。 嬌声には痛がるところも嫌がる気配も無く、ただ快楽に喘ぐ甘い響きがあった。 カカシは、爆発寸前なのを堪えてイルカを揺すり、何度も何度もイルカを鳴かせた。 今はまだ、色気というよりかわいらしさが勝っていたが、散々抵抗された後だっただけに、素直に喘ぐ様は見ていて胸が熱くなるほどの嬉しさがあった。
「イルカ、好い?」
「あ、あん、イイ、イイ、カカシ」
まさかこんな言葉が聞けようとは。
「俺を好き?」
「好き、カカシ、好き、ああ好きぃ」
「イルカ」
もう後は求めるまま、求められるままに、何度も何度も溶け合った。
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