イルカ38景
37:カカシさん
馬鹿言ってんじゃないよ〜
お前とー俺は〜
ケンカもしたけどひとつ屋根の下暮らしてきたんだぜ〜♪
イルカ先生が洗濯物を干しながら鼻歌を歌っている。 まぁそれはいつもの事だけれども、今日の歌は何だか物騒だ。
馬鹿言ってんじゃないよ〜
お前の事だけーは
一日たりとも忘れた事など無かった俺だぜ〜♪
「馬鹿」のところだけ妙に力が入るのは何故なんだろう? どうしてか判らないけどすっごく居心地が悪い気分になってくる。
よく言うわ〜 いーつーも騙してばかりで〜
私が何にも知らないーとでも思っているのね〜♪
よく言うよ〜 惚ーれーたお前の負けだよ〜
もてない男が好きならー俺も考え直すぜ〜♪
ジャジャッジャッ ジャジャジュジャッ
---間奏まで自分で歌ってるよ…
どうも男女の掛け合いの歌らしいな。 惚れたお前の負けだよって…。 やっぱり惚れた者負けなんだな。 そうだよな、ほんとそう思う。 俺、イルカ先生に捨てられたら生きてけない…。 これって過去の俺に当てつけてるって訳じゃあないよな?唯の歌だよなそうだよな?
馬鹿言ってんじゃないわ〜♪
馬鹿言ってんじゃないよ〜♪
遊ばれてーるの判らないなんて かわいそうだーわ〜♪
・・・・・・・・・(汗)
三年目ーの浮気ぐらーい大目にみ・ろ・よ♪
開き直ーるその態度ぉが気に入らないのよ〜♪
三年目ーの浮気ぐらーい大目にみ・て・よ♪
両手をついーて謝ったって許してあ・げ・ない♪
全然!まったく!塵ほども覚えがないけど、付き合い始めてまだ三ヶ月しか経ってないけど、けどでも! イ、イルカ先生がなんか怒ってるなら俺、俺…
「ごめんなさいっ イルカ先生ぇ」
あ、謝っちゃえ、取り敢えず。 正座して土下座する、取り敢えず。
「な、なんですか? いきなり」
「え? だって… え?あれ?…?」
「…」
---しまった!薮蛇だ!!
た、ただの鼻歌だったと………?
---もーーーッ 紛らわしい歌、歌わないでよぉ!イルカ先生ぇ〜〜!!(泣)
くら〜〜っとしてくるのを必死で堪え、カカシは正座したままダリダリと汗を掻いた。 イルカ先生は鈍い。 普通の人なら(特に女はこういう時もんのすごっく鋭い)電光石火の如く気が付いて烈火のごとく怒り狂うのに、イルカ先生は後ろ頭に手をやってポリポリと掻きながら頻りに首を捻っている。 ああ、この間が堪らないよ! どうか気付かないで思い当たらないでそのままボケてて!! 必死に祈った。 イルカ先生の視線が右上を漂い何かを想像している事を伝えてくる。 そしてその眉間にちょっぴりヒビが…ミシってミシって…!
「えーっと それってあのー 今歌ってた鼻歌の…」
「ち、違いますっ イルカ先生。 あの、俺、その、ま、間違ってですね、うっかりですね」
「うっかり? 本音を言っちゃったと?」
「わわわわわわっ 違います違うんですっ!」
「カカシさん、アナタまさか…」
アーメン!
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