イルカ38景
26:サクラ
「さーくらー ひらーひらー降りーて舞ーい落ーちて」
「い、生き物クラブ!」
「ブー、いきものがかり、です」
「むぅ」
「じゃあ、さーくぅらー さーくぅらー たぁだぁ舞ーい落ーちるぅ いーつぅかー…」
「あ、えーっとななな直太郎!」
「何、直太郎ですか?」
「え? えええっと、えっとぉ」
「はいブー、森山直太郎でーす」
「むぅむぅ」
「次は」
「まだやるんですかぁ?」
「じゃあ諦めるんですね? 俺は別にいいですよ?」
「や、やります!」
「今度はね、そうだこれ。 さ・く・ら 舞い散る中に忘れた記憶と き・み・の声が戻ぉってくぅる」
「わ、わわわわかります! ケッ ケツッ」
「ケツぅ?」
「ケツ…メ…イシ!」
「ピンポン!」
「やったー」
「この曲ね、ZONEっていう女の子ばっかりのグループがあったんですけど、それのsecret baseにそっくりなんですよぉ」
「はぁ」
「メロディ・ラインとかね、コード進行とか、そりゃもう! あとシンコペーションしてたらそのまんま!」
「はぁ、あの」
「ね! どう思います?」
「どうって、サクラの曲、多すぎます」
「そうですねぇ。 サクラってタイトルにすると売れるらしいんですよ」
「そうなんですか」
「でも、寿命が四年縮まるってジンクスもあるらしいんですけどね!」
「へー」
「売れたい、でも長生きしたい、みたいな?」
「イルカ先生さぁ、そういうのに詳しいよね、意外と」
「えっへん」
「でも約束は約束ですよね」
「だ、だぁってカカシさん、間違えたじゃないですかぁ」
「あなたが諦めないなら続けるって言ったんですよ」
「で、でも」
「でもじゃありません! さぁさぁ観念しておとなしくお縄を頂戴しなさいっ」
「い、いーやーだぁーっ」
「約束!」
「こ、こんな所は嫌ですっ」
「ここだからいいんじゃない」
「でも、外だし」
「だぁれもいません」
「でも、見通しいいし」
「夜ですよ」
「でもでも」
「ほんとに縛りますよ?」
「ひっ」
い〜〜〜や〜〜〜〜〜ッ!!!!
桜散る 月夜の庭の 花見酒
静寂に響く そは千鳥かな…
#いや、海豚でしょう…(合掌)
注:「静寂」はこの場合「しじま」と読みます。
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