ギター弾きを知りませんか?
7
城には多くの塔があった。 その多くの中の、どうしてその塔かと問われればそれは唯の勘だった。 どちらにせよ端から捜す訳にもいかないほど広大なのだ。 勘に頼るくらいで丁度いいのだ。 塔は石造りで、垂直の壁には足掛かりなど全く無い程精巧に石組みされていた。 仕方が無いのでチャクラを使う。 あまりチャクラは消費したくなかったがこの際背に腹は代えられない。 イルカはこの中のどこかに居る。
「ワシの知らんうちに王子が無茶をしたようで、済まなかったな。」
「いえ、館の一つや二つ焼けたくらい何でもありませんが、うちの客人が一人、そちらに間違って連行されてしまったようで、今日はその客人を返していただきに参りました。」
「そう言っておるが、どうなのだ、カイル?」
「客人などと嘘八百を。 あの人を拉致ってきたくせに」
「うちから拉致ったのはそちらでしょう? 王子」
「あなたの所では、客人を手枷足枷で連れてくる習慣なのですか?」
「あれは下の者が何か勘違いしたようで、失礼は充分詫びるつもりだった。 詫びる前にあなたに襲撃されてしまったがね」
「襲撃ではありません。 救出作戦です。」
「王子の独断で空挺部隊1隊を私用に使うなど、税金の無駄遣いも甚だしい。」
「あなたに税金について講釈されるとは思いませんでしたよ」
「私はちゃんと納税しておりますが?」
「それこそ空々しい!」
「まぁまぁ」
「父上! 父上がいつまでもこのような輩を野放しにしているから、こんな事になるのです!」
「国王陛下は公明正大なお方ですよ」
「まぁまぁ」
何なんだ、この頭の痛くなる会話は。
窓の外に垂直に立って腕組みをする。 頭が痛くて眩暈がしそうだ。
落ちてしまった方がどんなに楽かしらん。
ああ、やだやだ。
俺はこいつらからあの人を奪還するのか?
止めてもいいよな?
別にあの人に危害を加えたいと思ってる奴は一人も居ないみたいだし…。

何がどうなっているのか知らないが、イルカの事を取り合って喧嘩をしているようだ。
もう帰っちゃおうかな…
そう思った時、上から人が降ってきた。
「うわっと、イルカ先生、何で降ってくるんです?」
「カカシさんっ」
落ちそうになりながらもやっと堪え、イルカをお姫様抱っこしてふぅと溜息を吐くとイルカが首にしがみついてきた。
「しっ そんなに大きい声だしたら…」
ああ、言わんこっちゃない。
見つかった。
「イルカ先生っ」
これはこの国のバカ王子の声。
「イルカくん」
これはゴッドファーザー。
「これこれ」
これは…王様かな…
「あ…、いや〜皆さんお揃いで」
窓から雁首並べてこちらを見られ、カカシはハハっと乾いた笑いを零した。
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