ギター弾きを知りませんか?
6
総元締めファミリィの屋敷はすぐに見つかった。 サイレンと赤色回転灯と走り回る人々に囲まれて大騒ぎになっていたからだ。 その夜、その屋敷は全焼した。

「おいっ 何があった?」
呆然と立ち尽くす組織の下っ端らしき男の胸座を掴んで揺する。
「軍の秘密部隊が急に…」
「はぁ?」
赤黒い煙を立ち上らせるかつての自分達の城を茫然自失の態で見上げて、男はペラペラと喋った。
「あの男が昨夜着いて、ボスの会食に出せるようにしろって言われて…」
「あの男?」
「黒髪で黒い瞳の、すごく奇麗な男だ…」
「…それで?」
カカシはふぅと溜息を吐きつつ先を促した。
「ボロボロの恰好だったんで、風呂を使わせて衣服を整えたら、すごく…なんて言うか立派になって、俺も見惚れちゃってさ。 エスコートして連れて来いって言われてたんで、控えの部屋から一緒に別棟のディナー部屋まで歩いてたんだ。 来た時はこうして髪を括ってたんだけど、奇麗に洗って下ろすとさ、つやつやして光ってて、すげぇ色っぽかった。」
男は、自分の頭頂部に髪を一束に括りあげる仕草をしてみせながら、夢見るように話し続けた。
「渡り廊下を歩いてた時…」
と二階部分にある半壊した空中の廊下を指差し、男は何か見えない物を見るようにして思い出したであろう光景に体を震わせた。
「急に閃光が走って廊下の先が無くなって、人が、小銃を構えた空挺部隊の軍服を着た連中がいきなり…」
そこまで言うと男は顔を両手で覆った。
「俺、何が何だか判んなくて、そしたら彼が俺のこと突き飛ばして、気が付いたら渡り廊下の下の植え込みに落ちてて、上では銃声が響いてて…。 なぁ、あの人、どうなったんだ? 死んだのか? 撃たれたのか? なぁ?」
「俺が知るか!」
「でもさぁ、アンタだろ? ギター弾きの男って。 あの人がここへ来てすぐに俺に聞いたんだ。 知らないかって、さぁ。 アンタ、あの人の知り合いなら、助けてやってくれよぉ」
カカシはまた溜息を吐かされた。 国がこの件に介入する話は聞いていなかった。 どうなってるんだ、いったい。 ガリガリと銀の頭を掻いて盛大に溜息を連発する。
取り敢えず騒ぎに紛れて証拠を漁ると、あっさり書類が手に入った。
これで俺の任務は終りだが…
どうしろってんだ、全く!
何をどうしたいんだ、あの人は!
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