酒宴


9


 さて、一回寝ると記憶がリセットされるらしい鳥頭イルカも、さすがに寝かせてもらえなければその得意技も封じられ、止む無きカカシの欲望を治められないまでも何とか逸らそうと、あれやこれやと努力するのであった。



「あ、あん、んー」

 前回、「そんなしどけない姿を見せられたら」と言った所為だろう。 新しい水のボトルを取りに行って帰ってくると、イルカはシーツを体に巻きつけて迎えてくれた。 「それはチラリズムによる誘惑ですか」と、覗いている足先や肩口を擽りながら耳に囁くと、その耳が一瞬で真っ赤に染まり、半分隠れた顔が恐る恐るこちらを向くので、容赦なくその白い衣を剥ぎ取って、また己を穿った。

「や、あ、いやぁ」

 だから4回目は、彼は全身隈なくシーツに包まって俺を待っていた。 おかしくて暫しその場に蹲り腹を抱え、そしてその白い塊をその薄い布地の上からゆっくりゆっくり撫で、擦り、突つき、彼の反応を楽しんだ。 背筋を辿り、尻の狭間を指で幾度も行き来して、まだ痛むであろうアナルに狙いをつけて真上から強く弱く押してやると、白い芋虫がピクンピクンと跳ねる。 そして、いい加減苦しくなってきたのだろう、「ぷはっ」と顔を覗かせて荒く息吐く彼の口を間髪を入れず塞ぎ、全身をこれでもかといやらしく愛撫して彼を鳴かせてから、そのクタリとした体をまた貫く。 何回でも勃起った。

「いや、いやぁっ あ、ああーっ」

  5回目、6回目と、彼はもう抗う気力も体力も無くなったのだろう。 その精と汗に塗れた体をただ投げ出して、開かれるまま足を開き、俺を迎え入れて喘いだ。

「やめ、て、そこ、やめ…や、あ、やめてぇー」

 力の抜けた体に全てを穿ち、奥を抉り、擦り上げる。 彼はそれまでとは違う反応を示すようになった。 明らかに過剰に体が引き攣るソコ。 泣いて嫌がるソコ。 見つけた、と思った。 3日では無理かと、いつまでも痛い痛いと言って泣くイルカに諦めの気持ちが滲み出てきていたのだが、これでこの体を攻略できると確信する。 痛いだけのまま終らせたら、この人のことだ、次からは全力で逃げ回るに違いない。 ま、それも楽しいって言えば楽しいんだけども…(<鬼畜ッ)

「やぁ、ぁぁ…、いやぁ」

 正体を無くして泣き叫んでいたイルカの声のトーンがほら、弱々しい中にもジンワリと色を滲ませてきているじゃないか。

「い、あ、…めて、う、ふん」

 もう少しだ。 ほら、壁を越えろ!

「あ… あ、あ」

 ヒクンと一回イルカの体がくの字に引き攣り、ワナワナッと下腹と内太腿が痙攣した。

---お、おぉぅぅ(汗)

 突然やってきた吸引に、思わずこちらが呻かされる。 きゅうーっと吸い込んだかと思うと舐めるように顫動し始めたイルカの内部の襞が俺自身を握って離さない。

「イルカ」

 顔を覗きこんで名を呼ぶが、彼は「いやぁ」と小さく鳴いただけで目の焦点も合わなかった。

---無意識か

 吸い込まれる力に逆らって腰を一回引くと、彼の体もついてきてキュウキュウと締め付けが激しくなったので、その腰を両手で掴み無理矢理半分ほど引き抜いた。

「ひあっ」

 絶叫とともに仰け反り、イルカは硬直した。 そしてガクンと頽れるように弛緩する。 吸引と顫動はそれきり治まってしまったが、押し込むと難なく根元まで収まり、注挿も楽になってきた。 なので、それまでできなかったグラインドを混ぜた動きでイルカの中を掻き回す。 イルカは壊れたように暴れて泣き叫んだ。 その体を抱き締めて律動を刻む。 愛しい愛しいと心と気持ちを注ぐように。 彼は段々にか細く啜り泣くだけになり、反応も鈍くなった。 自分の欲望を放出するためにもう一度激しく揺すって泣かせた後は、呼んでも頬を叩いても全く反応しなくなってしまったので、俺はようやく彼から自身を引き抜いた。 もうそろそろ空も白み始めようかという頃だったと思う。 ぐったりとした体を抱き締め自分も眠ろうと努めたが、昂揚した精神は中々治まらなかった。 性欲のままに一晩中相手を責めるなど、覚えたての十代ガキじゃあるまいし、とまだまだ青い自分を笑った。 好きで好きで堪らなかった。 そして今はその「好き」が即「抱きたい」なのだ。

「イルカ」

 もう一度だけ、できないだろうか。 いや、もうこの際眠ったままでも、と鬼畜な考えを巡らせてそっと胸に手を這わせ乳首を摘まめば、腕の中の愛しい人が掠れた声で短く唸り、その手を抱え込んで彼の口元までぐいと運ぶと、はむっと指先を噛むではないか!

---かっ …かわいいっ(じーーん

 全身にぶるっと震えが走るほど感動してイルカを強く抱き締めた。 この人を好きになった俺って偉いっ! なんでこんなにかわいいんだ 体だって何だかんだ言いながら凄いイイ。 かなり感じやすいみたいだし、結構エロイ。 そんな彼と諦めかけてたセックスも棚ボタではあったがスル事ができたし、今こうして事後のこの人を腕の中に抱いている。 なんて幸せなんだ、俺! ああ、好きだ。 堪らなく好きだ。 どうしようもなく好きだー!

「イルカ…」

 我慢できずにそっと指をアナルに挿し入れると、「うう」っとまた唸り声が上がり小さく「できません〜」と続いた。 寝言でまで拒まれちゃったか、とおかしさに痙攣する腹筋と笑い声をなんとか堪え、欲望も抑えてそんなかわいく愛しい人を抱き締め直す。

---大事にしなくちゃな

 まだ2日あるんだしなと、イルカが知ったら裸足で逃げ出すエロエロ計画を楽しく妄想しながら、やっと眠りに就いた上忍である。


 ママン! ここに鬼がいるよ! 長持ちさせるには大事にしなくちゃって、酷いよ、酷いこと考えてるよ! ママン!

               ・・・

 ふわっと体が浮き、ゆらゆらと揺られた後、顔に当たる飛沫でぼんやり覚醒した。 暖かい湯舟が自分を待っていた。 広い胸に抱かれて浸かる湯は、とても安心で気持ちが良かった。 優しい手付きの掌が、指が、体を隈なく擦ってくれる。 ああ、なんて気持ちがいいんだろう。 後で、自分のアナルをカカシが指で穿ったと聞かされて愕然としたが、その時は下半身の感覚が無いに等しい状態だったので判らなかったのだ。 ただ暖かく気持ちのいい時間にゆっくり浸り、「幸せ〜」とか暢気に思っていた。
 風呂から上がり、バスタオルに包まれたまま下ろされたのは清潔なシーツで、イルカは天にも昇る心地で頬刷りをした。 あーん、幸せ〜とまたうとうとし始めたところをそっと抱き起こされ、冷たくて美味しい水を与えられれば意識も幾分はっきりする。 人心地ついてふぅと吐息を吐くと優しく覆われる唇にも応えることができた。 ちゅっちゅっと啄ばまれるように合わさっては離れる唇を追うように、自分も首を伸ばしてキスをした。 だって、気持ちよかったんだもの。 キスってこんなに気持ちよかったんだなー。 知ーらなかったー。 優しいキスは気持ちいい、もっとしてもっとと喉を鳴らしてうっとりしていると、肩を抱いていた腕に力が入り、ぎゅうっと抱き締められて接吻けが深くなった。

---あれ?

 なんだか不安が過ぎり出す。 あんなに気持ちよくて安心で、天国にでも居るようだったのに、暗雲がソロリソロリと忍び寄り、拡がってゆく。

---う、苦しい、苦しいです、カカシさん

 激しさを増す接吻けに耐え切れずその肩を押すのと同時に、それを自分に施している人の顔と名と、昨夜一晩の地獄(汗)の体験が一気に甦ってきた。

「やっ ややややだ、やだやだやだーっ もーできない、できないできないできな」

 暴れたつもりが体に思うように力が入らず、しかもどこかフワフワと頼り無くて頭もフラフラして、また塞がれるままに呼吸を奪われ舌を絡め取られてグッタリした頃、やっとカカシが唇を解放してくれた。

「もうヤですぅ(泣)」
「ふふふ、判ってます」

 俺も鬼じゃありません、熱出してる人を組み敷いたりしませんよと、言いながらもちゅっちゅっと接吻けを止めないカカシを見て思う。 「この人、鬼だ」と。

「え、熱出てるんですか、俺」
「そうですよ、判りませんか」

 うーん、判らん。 ちょっと体がふわふわする程度だから、きっと微熱なんだろう。

「アナタ、初めてでしたからね、熱くらい出るでしょう」
「そ…いうもんなんですか」

 はー、そーなのかー、結構たいへんなもんだったんだなー、昨日までは他人事だったもんなー、と暢気に構えているイルカに相変わらず接吻けていたカカシがぐぐーっと体重をかけてきた。

---おおお? これは”組み敷く”って言わないか?

 そのまま仰向けに押し倒され圧し掛かられて、逃げられないように顔を押さえられ激しく接吻けられて恐怖に慄く。 この人、やっぱり朝っぱらから一発ヤルつもりなのか?!

「んん、ん」

 服を着たままのカカシの下で自分だけ全裸でじたばた暴れて喘がされて、なんかすっごい狡いとちょっと怒りも湧く。 何とか一言言ってやりたいのだけれど、一向に口は自由にならず苦しさが増すばかり。

「い、嫌です、できませ、んー」

 やっと口が外された合間に言えたことは結局それだけで、それさえも首筋への愛撫に喘ぎながらだった。

「さささっき熱出てるって、俺が、だからシナイってぇー」

 嘘吐きーっと喚くと、煩い口は塞ぐとばかりにまたぶちゅーっと接吻けられ、一方で手があらぬ所を探り出し、握られ扱かれてすっかり勃ち上がってしまった頃ぼそりとカカシが言う事に…

「入れませんから」
「い、イレ、いれないって、ひくっ」
「ちょっと朝のご挨拶をするだけですったら」
「ごあ、ごあっ」

 ご辞退しますぅーと抗う間も無く、ニタリと笑う顔に硬直してしまい、その顔がふっと沈み込んでいくのを止められなかった。 むんずと担がれる両足。 態と見えるように高く抱え上げ、イルカが見ているのを確認するかのように上目で舐めつけられ、ねっとりと勃起したものを口に含まれる。

「ひうっ」

 信じられない、信じられない、信じられないーっ この人の常識が信じられない、この人の性倫理感が信じられない、何もかもが信じられないーーっ ひーーーっ


 という具合に、ある時は口で達かされ、ある時は乳首だけをしつこく責められ、またある時は触れるか触れないかの接吻けを背中中に施され、入れないまでも散々エロイことを致され性感帯を開発されて喘がされ、その合間々々はぐだぐだに甘やかされるという2日目の日中を過ごしたイルカ。 さすがの鳥頭も、もうカカシの顔を見れば「エロいことをする人」と映るようになった。 そして自分では気付かなかったが、イルカ自身もどんどんエロイ体に改造されつつあったのである。





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