千の星
3
仲間の者を、例え女であろうと男であろうと対象にしてはならない、と千影に固く戒められていたので、妖狐は獲物を求める場合は隊の外へ出るしかなかった。 お互い楽しむのだからいいじゃないか、と言ってみたが、風紀の問題だ、と一蹴された。 どの口が「風紀」などと言うか。 節操なく抱いたり抱かれたりしているくせに、と妖狐が詰ると、意外にもこの隊の中では抱かれるのは千明だけ、抱くのはおまえだけ、と言われて吃驚した。
そうだっけ?
でも、おまえだけ、と言われて悪い気はしない。 つまみ食いは外でやれ、と言われ渋々ながらも従う。 それと、人間は犯してもいいが殺してはならない、といつも釘を刺された。 近隣の住民との揉め事はごめんだ。 千影はそういう奴だった。
森に入った時は既にすっかり陽も落ち、女などが暗い森を通るはずもなかった。 男を抱くことを覚えはしたが、いろいろ面倒なのでやはりなるべくなら女がよかった。 抵抗も少ないし直ぐに快楽に堕ちる。 男は無駄に抵抗されるとつい傷付けてしまいやっかいだった。 だが今日はその男さえも通らず、小物の妖魔でも喰らうかと諦めかけていた時現れたのは、若い男だった。
男は小走りに森を駆けていた。 髪は黒く、目も黒かった。 決して面差しが千影に似ていた訳ではなかったが、その黒い髪と黒い瞳が彼を彷彿とさせ、先程の千影の喘ぎ声を思い出したらどうしてもこの男を犯したくなった。 おい、と声を掛けると、男は何故か嬉しそうに駆け寄る素振りを見せ、あとちょっとの所で人違いに気付いたか、びくっと竦んでからやおら身を翻した。 こんな時間にこんな暗い森の中、誰かと逢瀬の約束でもしていたか。 しかも相手は男ときた。 慣れた体なら面倒も少なくて結構だ。 妖狐は逃がさぬとばかりに男の進路を阻み、じりりと間合いを詰めて男を捕らえた。 男は、あっと叫んで暴れたが、力で敵うはずもなく直ぐにその場に組み伏せられて妖狐に口を塞がれた。
「ん、んー、ぃぁっ いやだ、やめっ… ぅん」
逃げる口を追って嫌を告げる口を塞ぐ。 妖狐は何時になく興奮した。
さっきの千影達に煽られているのだろうか?
否、違う。
この男に接吻けた時、何かが体を走り抜けた感じがしたのだ。 腰骨をちりちりと焦がすようなその感覚に、妖狐の雄は既に固く勃ちあがっていた。
---この男、何か違う。
妖狐は執拗に、本当に執拗に男の口中を犯した。 やがて男がくたりと脱力し、はぁはぁと胸を喘がせると、妖狐は忙しなく衣服を引き裂き、そのすべらかな肌を弄った。 胸の突起は既に固くしこり、妖狐を誘うように尖っていた。 片方を指で抓み、もう片方は迷わず口に含んで吸い上げた。 ああっと喘いで撓る背をきつく抱き、尚も乳首を責め立てる。 妖狐を引き剥がそうと髪を引っ張る手は、いつしか緩く髪を掻き回すだけとなっていた。 腹にお互いの男の徴が当たる。 妖狐は自分のモノと彼のモノとを擦り合わせるように腰を密着させて擦り付けた。 男の体がびくびくと跳ねる。 妖狐は我慢できずに男の下肢に沈み込むと、両腿を開いて抱き込み男のモノを吸い上げた。 いやぁ、と叫んで逃げを打つ体を固く戒め、男の中心に埋めた顔を激しく上下させる。 興奮した。 酷く興奮していた。 妖狐は夢中で行為に没頭した。
「あっ あっ あああーーっ」
男が痙攣したように果てると、口中に広がる男の精をごくりと飲み干し、更に扱きあげるように根元から吸引する。 舐めまわし、啜り上げ、口を窄めて扱く。 男は弱く、いやいやと震えながら喘いだ。 男の精は酷く旨かった。 体中に何か得たいの知れない精気が漲る。 もっと啜りたい。 もっと味わいたい。 もう一度男のモノを勃起させようとしつこく舐め回わしながら、今度は後ろの穴も探る。 男の精と唾液の入り乱れた双丘の間はしとどに濡れそぼり、直ぐに妖狐の指を受け入れた。 だが、その途端、男が今までになく全力で暴れだした。 手を振り、足を蹴り上げ、体を捩って全身で抵抗する。
舐めるまでは許して、挿れるのはだめってか。
それは蟲のいい話だ。
今更操を立てたって遅い。
押さえ込んだ耳元でそう囁きながら、再び勃起してきた男自身を握り、同時に穴をぐりぐりと指で穿つ。 急所を握られ、中を探られ、男はある瞬間にあうっと仰け反って抵抗を止めた。 ここか。 妖狐が、我が意を得たりとそこを数回指で抉ると、男のモノはあっという間に育ちぴくぴくと痙攣して雫を零した。 まず指を2本に増やし中を一回りくるりと抉ると、男の反応した箇所を指先で擦るように抜き差しをする。 にちゃにちゃと粘質の音が聞こえてきて男の内壁が緩んできていることを教えた。 妖狐は先走りをべろりと舐め取って全体をぱくりと口に含むと、ゆっくりゆっくり上下に吸い上げながら指の注挿を激しくした。
「ああ……ぁ、ああ……ああ……」
男は身も世も無く喘ぎだした。 諦めたのか、手足はぐったりと投げ出し、時折膝を立てては踵で地面を切なげに蹴った。 快楽に身を任せた艶かしい男の痴態に妖狐のモノは猛ったが、もう一度男の精が吸いたくて指を中でくいと曲げては抜き差しさせながら男自身をしゃぶっていると、やがて男は切ない声を上げて二回目の熱を放った。
ひくひくと震える男の体を押さえつけ、最後の一滴まで吸い上げる。 その時、背筋にぶるっと震えが走り尾てい骨まで抜けていったかと思うと、めりめりっと四本だった尾が五本に割れた。
---すごい!
こんな人間は初めてだ。 この男を心ゆくまで犯し、最後に骨まで喰らったら、自分はいったいどうなるだろう。 男の片足をぐいと担ぎ上げ、どろどろの後孔に自分の猛ったモノを宛がった時、男の口から何かが紡がれた。
「×××××…」
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