砂漠の鷹「P−40 ウォーホーク」
-Curtiss Model P-40 (Warhawk)-

●全長:11.37m
●全幅:9.67m
●重量:3607kg
●乗員数:1名
●最高速度:570km/h
●航続距離:563km
●エンジン名:P&W R-2800-59W
薀蓄
ヨーロッパ諸国の戦闘機が液冷エンジンを装備し活躍していることを受けて、米カーチス社も液冷エンジンを装備した戦闘機を開発することにした。1938年に初飛行した試作機はXP−40と名付けられ、米陸軍の審査の結果524機の契約が締結された。アメリカで最初に生産された近代単座戦闘機である。第二次世界大戦前半における主力戦闘機であった。ミッドウェイ開戦で戦局が転換期を迎えた当時なお、P-40は米陸軍戦闘機の半分以上を占めていた。
P−40の初陣は、シェンノート率いるフライングタイガー義勇軍の中国戦線で、P−40Eが中国大陸奥深く侵略した日本軍に対して厳しい反撃を加えた。もっとも、長い機首、威嚇するような尖ったスピンナーと大きな吸気口を持つP−40は、出現当時は常識破りのスタイルだったが、丈夫な機体構造に加えてしっかりした防弾設備が施されていたから機体の重量は重く上昇、旋回といった運動性能自体は平凡で、日本軍の零戦の敵ではなかった。
P−40はイギリス、フランスにも売却されたが、フランスが発注したP-40(モデル名はホーク81-A1)は機体を受け取る前にフランスが降伏してしまったので、英国に引き取られるという一幕もあった。同機でドイツ空軍と戦った英空軍は、P−40をME109メッサーシュミットとは戦闘させないようにしたという。P−40は次々と改良が加えられたので、初期生産型と後期モデルとは別機ような差があった。 主にヨーロッパではアフリカ戦線・アジアでは中国大陸で活躍したが、1941年の真珠湾奇襲攻撃の際にはハワイの基地に配備されていた当機が日本軍迎撃にも飛び立っていった。
D型などは生産された機体のほとんど大半が英国へ貸与され「キティホーク」と愛称がつけられているが、高々度性能を強化したF型が生産され初めて米陸軍も「ウォーホーク」と愛称をつけるようになっている。

戦前にすでに配備され、大戦初期のアメリカ軍の主力戦闘機であったカーチスP40ウォーホーク。様々なバリエーションが存在し、さらに英国を始め多数の国への供給によって多彩な顔を持つにいたった戦闘機だが、この機体名を挙げてすぐ頭に思い浮かぶのは、やはりシャークマウスのこのカラーリングではないだろうか。
戦争中盤以降、格闘能力や高速力に優れた新鋭機が製造されるようになってからもP-40の生産が続いたことは、カーチス社の意地であったのかもしれない。最終生産型であるN型の生産ラインが閉じたのは1944年12月のことであった。
機体詳細データ(P−40N) |
全長 | 10.16m | 全高 | 3.76m |
全幅 | 11.38m | 翼面積 | 21.92m2 |
自重 | 2,810kg | 最大重量 | 4,000kg |
最高速度 | 552km/h(高度4,570m) | 上昇限度 | 9,450m |
航続距離 | 1,740km | 巡航速度 | 450km/h |
発動機 | アリスン V-1710-81 液冷V型12気筒 1,200馬力×1基 |
乗員数 | 1名 | 総生産機数 | 16,802機 |
武装 | 12.7mm機銃×6、翼下に680kgまでの兵装を搭載可能 |
主要タイプ |
Model 81:原型機。V-1710-11エンジン(1,150hp)搭載。Model 75改造機
XP-37:Model 81を米陸軍が審査した際の呼称。社内呼称Model 75I
YP-37:V-1710-21エンジン搭載の実用試験機。発動機不調に悩まされる
XP-40:P-36AにV-1710-19エンジンを搭載した改良型原型。社内呼称Model 75P
P-40:米陸軍向けの初期生産型。V-1710-33エンジン搭載
P-40A:P-40にカメラを搭載した写真偵察機の呼称。1機のみ製作
P-40B:自動漏り止めタンク、機銃2丁増設のP-40改良型。性能は低下
P-40C:改良型自動漏り止めタンク、さらに2丁の機銃増設を施したP-40B改良型
P-40D:再設計改良型。V-1710-39エンジン(1,150hp)搭載。12.7mm機銃×4
P-40E:搭載機銃を12.7mm機銃×6に強化したP-40D改良型
P-40F:V-1650-1エンジン(1,300hp)搭載の性能向上型
P-40G:P-40にTomahawk Mk.IIAの主翼を取り付けた機体。一部はソ連へ供与
P-40K:V-1710-73エンジンを搭載したP-40E改良型
P-40L:P-40Fとほぼ同様だが、一部装備品が異なる機体
P-40M:V-1710-71エンジン搭載、細かい改善点以外はP-40Kと同等の機体
P-40N:最終生産型。V-1710-81(後に-99、-115)エンジン搭載
P-40R:練習機に改造したP-40F、P-40Lの呼称。V-1710系エンジンに換装
TP-40:複座操縦士転換練習機に改造されたP-40Nの呼称
Hawk 81-A1:Model 81に似たフランス発注の機体。仏降伏のため英国へ供与
Tomahawk Mk.I:英国に供与されたHawk 81-A1の呼称
Tomahawk Mk.IIA:英国供与型。P-40B相当の機体
Tomahawk Mk.IIB:英国供与型。P-40C相当の機体
Kittyhawk Mk.I:英国供与型。P-40D相当の機体。社内呼称Hawk 87-A2
Kittyhawk Mk.IB:英国供与型。P-40E相当の機体。社内呼称Hawk 87-B2
Kittyhawk Mk.II:英国供与型。P-40FまたはP-40L相当の機体
Kittyhawk Mk.III:英国供与型。P-40KまたはP-40M相当の機体
Kittyhawk Mk.IV:英国供与型。P-40N相当の機体
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オマケ
宮崎駿の映画『紅の豚』でポルコ・ロッソと空中ドッグ・チェイスを繰り広げたMr.カーチスの機体もカーチス社製。カーチスR3Cと呼ばれるシリーズの一つで、 第7回シュナイダーカップ第三位を契機に、 第8回と第9回は優勝している。 この時、カーチスで大空を駆けたレーサーは『ジェームズ・ドゥーリトル』と言う名で、 後に太平洋戦争に参加し、空母から自ら駆る機体を含め16機の陸上爆撃機を発艦させる神業をやってのけた後、 初の日本本土爆撃を敢行した。
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