ウラジーミルは何時くるの?
1
第一夜
「こないださ、夢、見たよ。 カカイルの夢」
「なにそれ」
文子は自他共に認めるカカイラーで泣く子も黙らせるカカシスキーである。
「あたしイルカだった。」
「なにーっ」
「だって仕方ないじゃん」
「なんでイルカなのよ、あんたカカシスキーでしょ」
「そうだよ」
「あ、わかった。 あんたカカシに抱かれたいカカシスキーなのね」
「う… それは、よくわかんないけどさ、とにかくイルカで受付に座ってたよ」
「いーなー。 あたしなんかさ、カカイルの夢なんか一度も見た事無いよー。 こんなにイルカを愛してるのにぃ」
「隣に三代目がいてさ」
「ってことはアレ、まだ木の葉崩しの前で中忍選抜試験も?」
「カカシにイチャモンつけたよ」
「…」
「…」
「だ、誰が?」
「あたし」
「誰に?」
「カカシ」
「…」
「ナルトはあなたとは違うーってさ」
「ちょっ ちょっと待った」
「千夏ちゃん、落ち着いて、ね」
「これが落ち着いておれよーかっての。 なになに、あんたあのシーンそのまま舐めたの?」
「そう、寸分違わず再現したよ…」
「うわぁ、いーなーー、くっそー、なんでおまえばっかり」
「よくないよ」
「なんでよぉ、いいじゃんそんな夢見れるなんてさぁ」
「だって、イルカ先生、後で泣くんだもん」
「イルカはあんただったんでしょうが」
「ちがうよ、本物がだよ」
「…文ちゃん、あたしよくわかんない」
「だから、あたしがイルカの身体乗っ取ってたんだよ。 そんであのシーン、ガーンとぶちかましたらイルカがあたしの中で」
「泣いたの?」
「そう、メソメソ泣くの、鬱陶しかった」
「イルカ、ウザイ奴だったの?」
「ううん、でもカカシと揉めたのがショックだったみたい」
「でも…、でもさ、アレはアレでしょ、やらないと…」
「そうだよね、アレは外せないシーンだよね。 だからあたしも張り切ってやったんだけど」
「泣かれた、と」
「それにさ、カカシを見る時だけ何かゲージが出るんだよ」
「ゲージ?」
「そう、格ゲーでHPとかMPとかのゲージ出るじゃんか? アレみたいなヤツと、あとカカシの思考が文字になってピコ〜ンピコ〜ンて回りに浮かんできたり、それが『任務、任務』とかって赤字で点滅したりしてさ、結構ショックだった。 コイツ、イルカ先生に対する時任務中なのかってさ」
「あ、文ちゃん、判るように話して」
「ターミネーターみたいになるんだよ」
「回り中ゲージだらけなの? ウザイ世界…」
「違う、カカシだけ」
「ふ、ふーん」
「イルカ先生も、いつもは見えないって言ってた。 あたしが降りてる時だけ見えるって」
「ちょっ ちょーーっと待った」
「千夏ちゃん、落ち着いて」
「文子、そんな変な夢見んなよ、危ないぞ」
「そう…なんだよね、圭ちゃんがさ、丁度泊まっててさ、なんか呼吸止まってたみたいだって言うんだよ」
圭は文子の彼氏だ。
「こ、こわー、それって『ウラジーミルは何時くるの?』ってヤツなんじゃ」
「ヤバイかな」
「ヤバイよ」
「実は昨日も見たの」
「げっ」
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