ギター弾きを知りませんか?
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「おい、黒髪で黒目の男妾はどうした?」
ここら辺一帯を統べるファミリィの屋敷。 そのボスの寝室らしき部屋のキングサイズのベッドの上には、求める者の影はなく主らしき小男が一人で寝ているだけだった。

「薬漬けにしてくれたそうだな」
「あの男のことか…」
ボスは呟いた。
「あの男ならもう居ない。 連れて行かれた。」
「どこへ? 誰に?」
「もっと上の連中にだ」
ボスは首筋にナイフを当てられながらも、怯えた様子もなく暴れるでもなくカカシを見上げた。
「ここには数日しか居なかった。 薬など使っていない。 来た時は若干やられていたが、やった手下共はきつく仕置きした。 だがあの男は幾らも堪えていなかったぞ?」
「あたりまえだ」
カカシはナイフの刃を首から外すと、今度は柄の頭で喉仏を押さえ付けた。 それでも充分瞬殺できる。
「ずいぶんと可愛がってくれたんだろうな、え?」
「彼は…」
ボスは視線を外してどこか虚空を見つめた。
「数日間ここに居て、閨を共にしてくれた。 彼の意思だ。 だが上の連中が急に訪れて彼を連れて行った。 どこかで噂でも聞いたんだろう。 彼は目隠しに手枷足枷されて車に乗せられて行った。 恐らく中央のどこかだろう。」
「おまえは自分の覚え目出度さと引き換えにあの人を献上したって訳か?」
「奴等はまず娘を人質に捕らえてからここに現れた。 彼は自分から進んで行くと言い出したんだ。 娘はまだ12歳だ…」
ふっと故郷の金髪のツンツン頭のガキを思い出す。
「彼がここへ来た時、初めに尋ねられた。 ギター弾きの男を知らないかと。 おまえの事か?」
カカシがちっと舌打ちをして体を離すと、こんな潜入行動の時でさえ自分の背中に律儀に括りつけられているギターを目にして、そのボスらしき小男が逆にカカシに詰め寄った。
「頼む、彼を助けてくれ」
全く!
何をやってるんだ、あの人は!
手足を拘束されたって?
身分が割れているんじゃないか
なんて不始末!
なんて失態!
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