ギター弾きを知りませんか?


2


 イルカはその男のオンナにされた。 薬漬けにされ、客も取らされ、何人もの男の慰み者になったと聞いた。 俺なんか追ってくるからそういう事になる。 故郷でおとなしく教師をしていればよかったのに。 カカシはチクリと罪悪感に胸を刺されたが、助けようとは思わなかった。 いつか目が覚めたら自分で故郷へ戻るだろう。 元々そんなに弱い男じゃないのだから。 そんな風に言い訳をし、そしてそのままその町を出てしまった。 だが、隣の町の、そのまた隣の町のやはりうらぶれた居酒屋で、イルカの噂を聞いた。
グラス
「…の町にさ、すげぇイイ声で鳴く男妾がいるってよ」
「一回抱くと忘れられないって話だぜ」
「漆黒の髪に黒曜の瞳で、抜けるように肌が白いって」
「突っ込んで揺さぶると、堪らない声で喘ぐって」
「ソイツを巡って刃傷沙汰まで起きたって?」
「男妾も巻き込んでたいへんだったって話だ」
「死んだのか? その男妾は」
「いや、知らないが、もったいない事だ」
「全くだ、一回抱いてみたかった」

 全く!
 何をやってるんだ、あの人は!
 逃げられない訳無いじゃないか
 だって彼は自分と同じ…







BACK / NEXT