ギター弾きを知りませんか?
Prologue
そこはある国の王宮の一室で、一同に会しているのはその国の王と、若い王子、国の闇に巣食うファミリィの大ボス、その手下で一地方都市を治める小ボス、ファミリィの手下と張り合う港の若い衆、そして一人の忍。 いずれも席を同じくするような者同士ではなかった。 だが、彼らはそれぞれ手に杯を掲げ、今乾杯をしようとしている。
「イルカ先生に」
見事な金髪の若い王子が静かにそっと自分の杯を上げた。
「海野イルカに」
初老の紳士然とした大ボスも、それに倣って低くイルカの名を呟きながら、一回捧げた杯に口を付けた。 後の者達もそれぞれがそれぞれの立場や想いの強さを表しながら、イルカの名に乾杯をした。 カカシは一人口の中で小さく「俺のイルカに」と呟いて杯を干しし、態々今日の為に持参した古びたギターを爪弾いた。
ポロロン
ポロロン
部屋は極力灯りが落とされ、程々の広さの其処此処に配置してあるサイドテーブルや、或いは壁に掛けられた数枚の絵の上などにあるほんのりした色合いの灯りのみが照らす、薄暗く静かな雰囲気で満たされていた。 あまり話をする者とていない。 唯、ゆっくりと美酒を味わい、想い出に浸り、時折カカシのギターに耳を傾ける。 そんな会合だった。
居ない者を想う。
それぞれが、それぞれの想いでその者を想う。
彼がこの世に生まれ出たその日に感謝しながら。
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