酒宴


6


「好きです、愛しています、イルカ先生。 どうか俺と恋人になってください。」

 片膝を着き、胸に手を当て、頭を垂れ、カカシは愛を請うた。 紳士はこうでなくっちゃと、決めてみたのだ。 イルカに先を越された形の告白は奇麗に無かったことにした。 紳士は相手に言わせちゃならんのだ。 元い、男なら男らしくビシッと決めろ(まぁ相手も男なんだけども)。

「カ、カカシさん、あの俺」
「ストップ」

 アカデミーのイルカの上司に火影からの休暇許可証をひかえ居ろうと突きつけて自宅へお持ち帰りしたイルカは今、カカシのベッドに座っている。 その膝の上で所在無げに組まれたり解かれたりしているイルカの両手をぎゅっと掴み、その膝に額づき、もう一度求愛。

「どうか、俺の恋人に」

 さっき俺が言ったよな、その台詞、そん時ゃはっきりした返事もくれないで、俺はすんごく不安で後悔して逃げ出しちまいたいくらい恥ずかしかったのに、なんだよソレ、と憮然としたイルカが中々紳士な雰囲気に乗ってこないのを物ともせずに、ずずいと寄って顔が付かんばかりに身を乗り出して、「おねがいです」とひたすら紳士に請う。 イルカは同じ分だけ仰け反って離れて、まぁ俺だって、自分から言い出した願いであるからして否やは無いのだけれども、なんかね、とカカシのその真面目「そうな」顔をまじまじと眺めた。 だが、ぐちゃぐちゃ考えるのは嫌なので取り敢えずOKしよっと、と頷いてしまうところがイルカなのである。

「はい、こっちこそ、よろしくおねが」
「やった!」

 紳士終了。

「イルカ(<いきなり呼び捨てか)」
「うわわっ」

 ぐぁしっと抱き締め押し倒し、取り敢えずキスキスキス

「ま、んんっ 待って、カカ、さ、ん」

 もちろん、「抱いて」と頼んだのは自分であるからして、恋人宣言した途端カカシがこういう事を仕掛けてくるのは想定内だ、とイルカも覚悟はしていた。 していたんだけれども、いきなり過ぎだろう? まだこの家に着いてから俺、お茶も出してもらってないし、なんか腹減ったし、普通こういった場合、談笑しながら夕飯をゆっくり食べて、変わりばんこに風呂に入ったりなんかして…

「そだ! 風呂! 俺、風呂に、カカシさん、カカシさんっ」
「だめ」

 一日アカデミーで子供相手に過ごした汗がぁ、と慌ててジタバタ制止の声を上げたが、首筋に吸い付きながらイルカのベストを毟り取っていたカカシは、手を休めることもなく一蹴した。

「でも俺、汗掻いてるし」
「イルカ先生のイイ匂い
「や、やだ、あ」

 ベストを放ると上着を捲り上げて鼻先を突っ込み、脇腹あたりから胸にかけて痛いほど吸い上げ舐めるカカシが、感に堪えないという声で呟く。

「イルカ先生の味がする
「や(汗)」

 恥ずかしい、これは恥ずかしいぞ、とそんなカカシの銀の頭を両手で押さえるが、圧し掛かられて今や首元まで捲くられた上着が拘束具と化していて、ぐいぐいと容赦なく舌を這わしてくるカカシを押し退けることさえ覚束ない。

「いっ あっ」

 そのうちに、胸にチクリと痛みが走り、カカシが自分の乳首を摘まんでは捏ね繰り回しているのを知った。 なななんでそんなトコ、と思うのだが、抓られる度に腰が浮く。

「や、ん」
「感じる?」
「ううんっ」

 含み笑いのような声で問われて、カーっと羞恥心が湧いてきたイルカは、ぎゅっと目を瞑り、ぶんぶんぶんっと首を思い切り振って否定したが、今度はそこがネロリと生暖かい感触に覆われ、ザラリザラリと濡れたモノが先を舐めていく。

「はっ あ、やだ」
「尖ってるの、判る?」
「わかんないっ」
「アナタ、感じてる」

 舌で乳首を押されるように舐められると、ツキンと下腹に何かが抜けていった。 感じてる? 俺、こんな事されて感じてるのか? あ、あ、何だかヤバイ気が…

「ひっ」

 ヤバイとイルカが感じるより早く、カカシの大きな手が下穿きの中に差し入れられた。

「やっ やめ、て」
「感じてる
「い、やぁ、ああっ」

 長い指がイルカを握り、一回先を撫でると根元から先へとゆっくりゆっくり扱かれた。

「あ、ああ」
「感じてくれて嬉しい
「や、だ、カカ、さん、離して」
「だめ、俺たちセックスしてるんだよ?」

 セックス…、これが…。 他人の、それも男の手でそこをそんな風にイタサレタ事のないイルカは、男同士の拒否感から萎えるどころかあっという間に硬く立ち上がって先端から先走りまで零れてきて、その居た堪れなさに許されたなら「うそーっ」と両手で両頬を押さえて叫びたかった。 だが実際イルカの両手は、自分を押さえつける広い肩にヒシと縋り、競り上がってくる快感に唇を噛んで耐えるしかできない。

「う、うぁ、あ、あ」

 もう声も抑えられなくなってきた。 カカシはと言えば、イルカの乳首に吸い付き時にはカシリと尖った先を甘噛みし、イルカ自身を握った手は竿を扱くばかりでなく陰嚢を揉みしだくようにしてきて、その物凄く巧みな手淫でもってイルカを泣かせて、否、鳴かせている。

「あ…、も、だめ、離してぇ」

 涙が信じられないくらいポロポロ零れてイルカは閉口した。 懇願する声がまた全き甲高い泣き声で、耳を塞ぎたいくらい甘ったるい。 もう自分でそんな自分が信じられない。

「カカシさんっ」

 切羽詰って、カカシの肩口から嫌々をしながら必死に名を呼ぶと、ふっと自分から手が離れた。 なんだかホッとしたような、そんな殺生なみたいな気持ちを自分で処理しきれずに、唯はぁはぁと胸を喘がせていると、今度は押さえつけていたカカシの体が浮いたなと思った次の瞬間スポンっと下着ごとズボンを剥ぎ取られ、なんとその顔が自分の股間に埋まる。

「なっ まっ ちょっ(滝汗) うわぁっ」

 言葉もまともに出ないうちに、ガッシと両腿をカカシに抱えられ、ベッドの上を体が滑り…

「な、なにを、カカ、カカ、さ、ひぁっ」

 制止する間も無くズッポリと湿った感触に自身が包み込まれた。 間髪を入れずに開始されるディープスロート。

「ああっ あっ いや、ぁ、ああっ」

 細く腰の無い銀糸を思い切り掴んで引っ張るが、カカシの顔の上下運動を止めることはできなかった。 抱えられた両足が、その上下動に同期してビクンッビクンッと震えているのが目に入り堪らなく恥ずかしい。 でも、その目もチカチカしてきて下腹もぶるぶる波打って、もうどうしようもなくなってきて、イルカはまた泣き声で訴えた。

「カカ、さ、離してッ 出る、出ちゃうぅ」

 先端を舌先で突くように舐めていたカカシは、その声にチラッと上目で視線を寄越した。 その目付きのなんと猛々しいこと。

---ケダモノの目!

「い、あ、ああーーっ」

 もうダメだ、と思った瞬間、ちゅうと一際強く吸われてイルカは達した。

「あ…、は…、うん」
「ごっくんッ」
「?!」

 喘ぐ胸をなんとか宥め、呼吸を整えるくらいが精一杯の状況だったが、聞こえてきたその嚥下の音にイルカは愕然としてふんぬっと上半身を起こした。

「カ、カ、カカシ、さん?」
「ごちそうさま
「ののの飲むなーっ」

 血管が切れるかと思った。 毛細血管という毛細血管が膨張して、熱いと感じられないくらい顔が火照り汗が噴出す。 信じられない。 あのカカシが、お、お、俺の、の…なんて、飲む、なんて…

「離してっ 離してくださいーっ」
「まだだめ」
「こ、今度は俺が、し、します、から、おねが」
「だめ」

 さっきからダメばっかりーッ(泣) とまだ自分の股間で口元を拭うカカシの顔が直視出来なくて、火照る頬を片手で押さえもう片方の手でカカシの顎の辺りを思い切り押し遣った。

「お願いです、今度は俺にヤラせてください、でないと」
「だめ。 俺がこの半年どんなに我慢してきたか、アンタの体にとっくり教えるんだからっ」

 もうトロントロンになるまでアンタを愛撫して達かせるんだからッと股間で力説される。 もうトロントロンですからお願いですから離してください。 いーや、アンタ、セックスがどんなもんか全然判ってない。 判ってます、判ってますから離して。 ずぇっっっったい離さないっ

「いや、あ、いやぁーっ」

 押し問答もほんの束の間、カカシは達して振るえるイルカをまた口に含んだ。

「あ、あううっ ひっ いうっ」

 回りのシーツを掻き毟り、引っ切り無しに漏れる喘ぎ声を抑えなくちゃと口を両手で押さえ、またシーツを握り、身もだえのたうち、その地獄の数秒間を数十秒に感じながら泣いて叫んで、また達かされる。

「ぁ、ぁぁ…、ぅぅ…」

 はっはっと切れる息の下からか細い声が漏れていく。 両の目尻からは涙がスルスルと流れていく。 それ以外は何もできない。 ぐったり脱力した体は鉛のようで、「これがセックスなら、俺もうご遠慮したいです」と頭の中ではカカシに訴えていたが、実際には口もまともに動かなかった。

「イルカ」

 またしても口元を手の甲で拭いながらイルカの体に乗り上げてきたカカシが、吐息と共に自分の名を呼ばわりその餓えた獣の目で見つめ、乱暴な手付きでグイとイルカの首の下に腕を差し入れ抱き締めて、ぶちゅーっと接吻けてきた。

---青臭い

 俺の味…?(涙)。 もう何の抵抗もできない自分であったので、絡められたカカシの舌で存分にその味を味わわされても文句も言えなかった。

---俺、これからどうなっちゃうんだろ

 明日の朝には隅から隅まで食い尽くされて、何にも残ってないんじゃないのか?と、これまた頭の中だけで不安を訴えてみるイルカ。 カカシの激しい接吻けに、自分の口から出るのはただか細い喘ぎだけ。 密着した体の下腹の辺りにグイグイと押し付けられる、カカシのぎんぎんに育ったモノがもう怖ろしくて怖ろしくて、でも自分から「抱いて」と言った建前上嫌だとは絶対に言えないと殊勝に耐える。

「イルカ、イルカ」

 だが、興奮し切った様子で自分を求めて求めて接吻けを繰り返すカカシに、胸の奥の方からジーンと熱いものが湧き出してくるのも事実だった。 そうだ、俺だってカカシが好きなんだ。 苦しいし、ものすっごく恥ずかしいけど…嫌じゃないもんな。 漢イルカ、「えいくそ、俺も男だ、ドーンと来いっ」みたいな受けて立つぞ感が急激に膨れ上がり、その重い腕を根性で上げさせてカカシの背に回す。

「カカシさん、俺も好きです」
「…!(感涙)」
「俺も、アナタが……ん、んーーっ」


 愚かなりイルカ。 煽ってどうする。 それに、「明日の朝」ってなに? カカシが何の為に3日も休みを取ったと思ってるの? だいたい、まだ2回達かされただけだからっ! 合体とか合体とか合体とか全然まだだからっ! 今からそんなんでどうすんのーっ?! ぜ、ぜーぜーはーはー…、ご、ごほん。 失礼(汗)。





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