Fat IRUKA's Painful Efforts Days
-太イルカ、その涙ぐましい努力の日々-
Fat
「カカシさん! …よかった、ご無事で… おかえりなさい!」
「ただいま…ってイルカ先生っ アンタ、浮気してましたね!」
「は…はぁ?!」
カカシが予定を二週間過ぎてやっと帰還した。 イルカは感動の再会を涙に潤む目と今にも飛び付きたい気持ちを抑える前傾姿勢で表現したが、返ってきた言葉は浮気疑惑だった。
「な、な、な、何を言ってっ?!」
「こんの浮気者! どこのドイツと乳繰り合った?!」
「ち…!」
チチクリアッタ? あんまりである。
・・・
イルカと付き合って三年。 回りの迷惑顧みないラブラブいちゃいちゃ振りに周囲の関心も薄れ、そろそろ倦怠期じゃないの?という懸念もなんのその。 どうして妊娠しないのかというくらいにあの体を愛し、注ぎ、飽きずに鳴かせてきたんだよ諸君。 イルカはすっかり抱かれる体になって、三日もセックスしないとストレスで体調が狂うほどなのよ諸君。 でも俺だって上忍なのよSとかAとか任務が入るのよ三日どころか1ヶ月なんていう長期任務もあるのよそうなのよ。 その間、イルカは太るようになった。
「アンタ、だってそんなに痩せてっ 誰かにアンアン言わせられてたとしか思えないじゃないっ!」
「そ…そんな、ただ痩せたってだけで、なんで俺が浮気したことになるんですか?!」
「アンタ、俺が長期任務から戻ったら、いつもは太ってるじゃないっ こうほてっとぷるっとしてるじゃないっ!」
「そそそそそんなことはあああありませんっ!!」
顔を真っ赤にして怒るイルカが怪しい。 ドモる口調が益々怪しい。
「許しませんよ! イルカ先生 さぁさぁきりきり白状してもらいましょうか!」
「してないものを白状なんてできませんッ!」
セックスはかなりの運動だ。 特に俺の場合、超絶技巧と絶倫さと上忍の体力を以ってして挑むのだから、そんじょそこらのセックスと一緒にしてもらっちゃあ困るのよ諸君。 その俺に毎晩愛されてるイルカが、俺の留守中に運動(セックス)不足になっちゃうのも仕方なかろうってなもんなのよ。 だから、長期任務から戻ると受付のイルカの顔がいつも一回りぷっくりしてたって許せちゃうのよ、そこがまたかわいいじゃないのねぇ。 そのちょっとふにっとした体をその晩のうちに殆ど元の引き締まった撓る若木のような体に戻すのが俺の楽しみなんだよ諸君。 「1発−1kg」の掛け声も高らかに3〜5kg減らすんだよ諸君。 判るかね? そんな風に、膨らんだり縮んだりするイルカを愛して止まないのよ俺は! 今回は1ヶ月ほどかかってしまったから4kgは減らさなきゃって意気込んでいたのに、なのにこれってどうよ?
「俺の居ない間いつもならアンタ、運動(セックス)不足で太るじゃない。 でもなぁにその体? 前より痩せちゃって! 誰かとよろしく運動(セックス)してたんでしょ?!」
「違います!!」
イルカは立ち上がってそして、ついにぽろっと涙を零した。
「…違います」
・・・
「カカシさんが長期の任務に出られると俺が太るのは、それは… カカシさんのおっしゃるとおりです。 でもそれは、アナタが居ない間、寂しかったり不安だったりすると俺、つい食べちゃうからで、決して運動(セックス)不足って訳じゃありませんッ」
太ってたの知られてたんだと、イルカはちょっとショックだった。 気が付かないでか! 見りゃあ判る、と回りは呆れるだろうが、本人は大概そんなもんである。
「これでも毎日それなりに鍛錬してますし、カカシさんの留守中いつもより運動(決してセックスではない)量が減るってことは無いですよ。 そ、そりゃあカカシさんの夜のお相手は、すごくその…しょ、消耗しますけど…。 とと特に長期任務明けの夜なんか俺、死んじゃうって毎回思わされて… でもでも、そんなの毎日じゃないし、いつもは俺だって仕事に行けなくちゃ困りますし、カカシさんだってそれなりに手加減してくださってるじゃありませんか?」
「してないよ、俺」
「へ?」
「アンタが慣れたんじゃないの? 俺、イルカ先生とのセックスはいつも全力です! 全身全霊を上げて励まさしてもらってます。」
「は、はぁ」
「だから、アンタが俺の留守中に痩せるなんて有り得ないんですよ! さぁ、もういい加減シラを切るのは止めて白状しなさいっ」
「そんな… 俺、今回は途中で食べられなくなってそれで痩せたんですっ 途中まではいつも通り太りましたけど」
「じゃあ、途中から浮気したんですね? でもそんなの言い訳になりませんよ!」
「だから違うって言ってるだろうっ!!」
ちょっとは人の話聞けっとイルカは怒鳴った。 俺が今回痩せたのは、いつも帰還予定日など告げないで行くカカシが今回に限って出際に「26日までに帰る」と一言約束して行ったからだ。 だから待っててと優しくキスしてくれたじゃないか。 俺は待ってた。 態々言ってったんだからと信じて、26日が終るまでただじっと待ってたんだ。 でも、任務に絶対は有り得ない。 きっと不測の事態で予定が狂ったんだ、仕方ない、きっと明日は帰ってくると、そう思って次の日も待った。 そうやって三日過ぎ、五日過ぎ、一週間過ぎ…。 その間どんどん食が細り、俺はそれまで太った分をお返しして尚余りあるほど痩せた。 本当はいつだって痩せちまうんだ。 それを無理して食べてたのに。
「今日で何日過ぎたかアナタ知ってますか?! 10日以上も過ぎてんですよ! 俺は心配で不安で…寂しくって夜も眠れなかったってのに… それをアンタは言うに事欠いて「浮気」? ふざけんじゃねぇっっっ!!!」
ふざけるな! もうアンタなんか知らない! もう別れてやる!
「アンタなんかとはもうこれっきり…」
「イルカ先生っ!」
後の言葉は飲み込まれた。 カカシの唇に。
・・・
しまった忘れてたよ…イルカ先生の誕生日…。 言ってったよ確かに出際にぽっと思い出して。 でもまぁ任務が色々大変であれこれ苦労してちょこっと記憶の外に置いといたらそのまんまになっちゃってたよ。 でも忘れてたなんて口が裂けても言えないのでキスで誤魔化す。
「ごめん、ごめんね? イルカ先生」
こういう時はアレだ、相手に喋らせちゃいかん。
「俺を許して、ね? ああ、こんなに痩せちゃって! 俺のかわいいイルカ先生が痩せて病気にでもなったら俺悲しくって死んじゃうっ もう今日はいっぱいご馳走しちゃうから、ね?」
「むぅ」
剥れて口を利いてくれないイルカがまたかわいい。 ほっぺたを膨らませそっぽを向いて目を合わせようとしないイルカの顔中にキスをする。 ほらほら、もうヒクヒクってしてきたよ? イルカ先生ったら優しいんだから、もう一押し。
「ね? 機嫌直して? 二週間遅れだけど誕生日祝いもしちゃう。 ね?」
「もういいです」
やった! 誤魔化されてくれた!
「じゃ、じゃあ取り敢えず家に帰ってまずH…」
「アホですか?! 俺まだ仕事中!」
「もう帰ってよし」
そこでウンザリしたような五代目の声が割って入った。
「頼むから余所でやってくれ」
ここは受付の真ん中だった。
「イルカは明後日まで休暇をやる。 さっさと行けっ」
剰えシッシッと追い払われ、我に返ったイルカは羞恥にか真っ赤を通り越して青くなって固まってしまった。
「ありがとござま〜す! ほんじゃっ そういうことで!」
だが、まったく堪えていないカカシはイルカを担いでサッサと部屋を後にした。 イルカはカカシの肩の上で固まったまま滝のような汗を流している。 正気に返る前に自宅へ連れ帰ってベッドで身包み剥がしてしまおう。 そして余計なことを喋り出す前にいつもより濃厚に愛撫を施し達かし捲くって、それからゆっくりたっぷりと1ヶ月ぶりのイルカを堪能して…。
「うっふっふっ」
にやける顔を叱咤激励して帰宅したカカシは、だが骨ばったイルカをおっかなびっくり一回だけ抱いたところで、体力の落ち切っていたイルカに1ラウンドで落ちられてしまったのだった。
・・・
「はい、アーン」
「もう食べられませんて」
「いいえっ 食べなきゃダメです」
「でももういっぱいで」
「だいじょーぶ、はいアーーーン」
元々そんなに大食じゃない。 普通なのだ。 ストレス溜まると間食が増えるってだけで一回の食事の量なんか知れてる。 でもカカシはイソイソと台所とイルカの居るベッドの間を行き来する。
「ほーら、デザートもあるんですよ〜」
「あ、あの、デザートはもうちょっと後で…」
「だーめ、はいアーン」
うっ 吐きそう…
「さーさ、いっぱい食べて太りましょうね〜、イルカ先生。 全然戻らないじゃないですかぁ」
「あの、カカシさんがどうして赤ん坊ができないのかってくらい中出しするの止めてくれたらすぐにでも」
「却下! 俺のを腹に注がれて気持ち良さそうに喘いでるアンタを見せられちゃったらもう元になんて戻れません。 責任取ってもらいましょ」
「責任って、俺は!」
「さーさ、もう無駄話はお終いっ ちゃーんと食べてねイルカ先生。 1ラウンドしか保たないイルカ先生なんて俺ヤですからね〜」
ね?と力を篭められて、イルカは溜息と共に口を開けた。 俺は1ラウンドで充分だ。
「あ〜〜 やっぱ任務明けはほてほてっとしたイルカ先生を思いっきり抱き倒すっ! これですよね?」
「1発−1kg! いえ〜いっ」と叫びつつデザートのプリンを口に運ばれて「ははは」っと引き攣った笑いを浮かべたイルカは三日後にやっとアカデミー復帰した。 そして今も、膨らんだり縮んだりしている。
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