クープランの墓
- Le Tombeau de Couprin -
6
Toccata
第6曲:Toccata 「ジョゼフ・ド・マルリアーヴ大尉に捧ぐ」
カカシの居ない一週間。 六日目。
カカシは予定どおり夜になって帰宅した。
そして物も言わずにイルカを寝室に引っ張り込んだ。
初めての時も、こんなに乱暴ではなかった。 一回縺れた後で縒りを戻した時も、激しくはあったがもっと丁寧で、痛い思いはしなかった。 そうなのだ。 イルカはカカシとのセックスで一回も流血したことが無かった。 それほど大切に扱ってくれた。 今までは。
途中から声が出なくなった。 喉が嗄れて痛かったが、体中が痛かったのでよく判らなかった。 視界が定まらず、熱がぶり返してきているのだ、と思った。 そうだ、熱の所為だ。 こんなに苦しいのは自分の不摂生の所為。
「っ う、んんーっ」
無理矢理達かされるのも、もう何度目か。 寝汗をかいて汚れたシーツを洗濯したての物に換えてあったが、もう精と汗と唾液とでドロドロだった。 せめて抱き合ってシタイと切に願ったが、カカシはずっと後ろから激しく揺すっては抉り掻き回し、何度も何度も挑んできた。 首筋を押さえつけるようにしてサレていたので、イルカは振り向くこともできなかった。 涙と唾液でグショグショの顔をシーツに押しつけ、声を殺し、イルカは泣いた。
カカシが怒っているのは判った。 だが、何にそんなに怒っているのか、理由が判らなかった。 恐かった。 こんなにカカシを恐いと思ったことは無かった。 理由を聞きたくてもできなかった。 ただされるままにサレ、泣くしかできなかった。
気が付くと朝で、カカシは居なかった。 体中ベタベタのカピカピで、風呂にも入れて貰えなかったと知った。 今までは、イルカが動けなくなると必ず姫抱きにして、風呂場まで運んでくれ、そこで一緒に湯に浸かりながら体を洗ってくれた。 優しく睦言を囁きながら、多少の悪戯などもしながら、仲良くイルカとの風呂タイムを楽しんでいた。 と、思っていた。
「い…ったぁ」
筋肉と言わず関節と言わず、体中がギシギシと痛んだ。 アナルから背筋に掛けて引き攣れるような痛みも走り、中々体を起こせなかったが、一人でなんとか風呂場まで行き、一人でシャワーを浴びた。 そして着替えを済ませると、紅の事務所に電話をかけたのだ。 カカシが帰って来ないから。 すぐさま紅とアスマが飛んで来た。 そしてイルカの泣きはらした目と、目の下の隈と、掠れた声と、覚束ない体の動きと、唯ならない雰囲気を見、聞き、感じて、二人はイルカをベッドに押し込むと、アスマがカカシを探しに出て行った。 紅はイルカの額に手を当てて顔を顰め、氷嚢を作ってきてイルカの頭に下に突っ込み、言った。
「全部、あのバカがやったのね?」
クリスマスまであと、2週間だった。
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